世界中で愛されている日本アニメ。その代表格は忍者や武士、呪術、巫女など日本的なモチーフの「NARUTO」「呪術廻戦」だが、それ以外にもある。アニメーションプロデューサー・大貫佑介さんは「異世界、生まれ変わり、転移、最強、追放、悪役令嬢、無双、レベル999といった単語が入ったタイトルの作品が多く、これがアメリカなど海外配信プラットフォームから大きな支持を得ている」という――。

本稿は、大貫佑介『アニメビジネス 漫画・小説・アニメが100倍おもしろくなるアニメの教養』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

フランス アミューズメントテーマパーク ナルト
写真=AFP/時事通信フォト
欧米でも日本のアニメは大人気だ(フランス アミューズメントテーマパーク ナルト)

海外で「値段がつく」アニメのジャンル

【study point】
●海外市場で強いアニメ
●「ジャパニーズバトル」が支持される理由

では実際に、海外配信プラットフォームが「高いMG(Minimum Guarantee の略称、最低保証金のこと)を出したい」と考えるのは、どのようなアニメなのでしょうか。

この質問に対しては、業界関係者のほとんどが、ほぼ同じ答えを返します。

「異世界転生バトル」
「悪役令嬢」
「成り上がりバトル」
「日本要素の強いバトル」

最近のアニメのラインナップを思い浮かべてみてください。

同じようなジャンルが多くあると思います。「異世界」「生まれ変わり」「転移」「最強」「追放」「悪役令嬢」「無双」「レベル999」などといった単語が入ったタイトルを、大量に見かけませんか?

SNSでは、「また似たような設定だ」「テンプレばかり」といった声も上がります。しかし、製作側が新しいジャンル発掘を放棄しているわけではありません。海外で値段がつき、確実にビジネスが回るから成立しているのです。現在のアニメ業界では、「海外で再生されやすいジャンル」が、企画として圧倒的に通りやすいといえます。

逆にいえば、どれだけ脚本が素晴らしくても、会話劇中心だったりローカル文化に依存していたりする作品は、「海外でどれくらい再生されるか」が読みづらいため、企画段階で慎重に見られるケースがあります。

ジャンルとして特に強いのが「なろう系」

ジャンルとして特に強いのが、いわゆる「なろう系」と呼ばれるものです。「なろう系」とは、小説投稿サイト『小説家になろう』から人気が広がった、異世界転生やチート能力、追放、成り上がりといった要素をもつ作品を指します。

現在では深夜アニメ市場の巨大ジャンルになっており、ランキング上位100作品(原作)の多くが次々とアニメ化されています。

もう1つ海外で圧倒的に強いのが「日本要素の強いバトルもの」です。たとえば、忍者や日本刀、妖怪、呪術、巫女、武士といったいかにも「日本的」なモチーフをもつ作品です。

海外ファンが、日本アニメに求めている「日本らしさ」は、海外視聴者にとって非常にクールに映ります。和風の建築、漢字、忍者の印を結ぶ動作などは、日本でしか作れない世界観なのです。

代表例をいえば、『NARUTO‐ナルト‐』『BLEACH』『呪術廻戦』『ダンダダン』など、世界的人気を獲得しているタイトルが挙がります。

実際、テレビ東京の海外アニメ収益を長年支え続けている代表的IPの1つが『NARUTO‐ナルト‐』です。連載・本放送が終わっているにもかかわらず、『NARUTO‐ナルト‐』はどのアニメよりも稼ぎ続けています。

新作アニメが次々と生まれるなかでも、海外売上ランキングでは上位に名を連ねています。

これは業界内では常識ですが、「最新ヒットを作る」だけではなく、10年、20年、世界で稼ぎ続けるIPを育てる」ことが非常に重視されているのです。

そして現在、問題になり始めているのが、値段がつきやすい原作の枯渇です。特に「なろう系」は、ランキング上位作品の多くがすでにアニメ化されているため、業界全体が「海外で値段がつくジャンル」を探し続け、作り続け、ついには掘り尽くし始めている状態だといえます。

●「海外で売れるジャンル」が優先的にアニメ化されている