もっとも、中国向け比率の低下は、地政学リスクの分散という観点から見れば、必ずしも否定的に捉えられるべきものでもない。米中対立が長期化するなかで、特定地域への依存度を下げ、台湾・韓国などAI半導体の主要生産拠点向けに成長の軸足を移していることは、リスク管理の面では前向きに評価すべきだろう。
ただし、ここで留意すべきは、中国向け比率の低下の影響が、単なる地域別売上構成の変化には留まらない点だ。
これまで中国市場は、世界の半導体市場が調整局面に入った際の「緩衝材」として機能してきた。先述の通り、2023~2024年にかけて各社の中国向け売上比率は大きく伸長したが、これはコロナ禍特需の反動で世界の半導体市場が調整局面に入り、韓国・台湾などの投資が落ち込むなか、中国勢による積極投資が各社の業績を下支えしていたことの表れでもあった。
しかし今後、この中国市場の「緩衝材」としての機能が弱まれば、装置メーカーの業績は、これまで以上に先端半導体向けの設備投資需要の影響を受けやすくなる。
先端半導体の世界は引き続き大きな成長ポテンシャルを有する一方、製造の担い手はTSMC、サムスン電子、SKハイニックス、マイクロンなど、世界的にもごく一部の企業に限られている。そのため、ここへの需要の集中は、少数の特定顧客への依存度の増大、および彼らの業績や市場サイクルの変動に対する脆弱性の増大にもつながりうる。
「ブームの先」を見据えた収益基盤の盤石化が鍵
とはいえ、実際にはこうしたリスクを装置メーカー各社も見逃しているわけではない。特定の地域や顧客に依存しない、より盤石な収益基盤を構築するための取り組みを進めている。
その一つが、共同開発や技術協業を通じた顧客基盤の強化・拡大である。
装置メーカー各社は、顧客の次世代プロセス開発に早期段階から協力・関与することで、将来的な需要の開拓・獲得を図ってきた。さらに足元では協力の範囲は単一工程での技術開発に留まらず、複数工程をまたいでの最適化や、プロセス開発や量産時の制御におけるデータ・AIの活用にまで拡大している。
例えば東京エレクトロンは自社のDXソリューション「Epsira」において、データ連結を通じた装置側と顧客の現場双方の生産性向上に取り組んでいる。また、アドバンテストは検査工程で得られるデータをAIと組み合わせることで、同工程を製造プロセス全体の最適化や市場投入短縮のための重要データ基盤として再定義している。

