起点を技術ではなく世界需要に

どの技術を保有しているかから始めるのではなく、AI時代にどの需要が大きく伸び、誰が対価を払い、日本は価値連鎖のどこを複数押さえるのかから逆算する。先端ロジック、HBM周辺、先端パッケージング、光電融合、低消費電力AI、ロボティクス、自動運転など、勝負する市場ごとに戦略をつくるべきだ。

第2に、量産を「工場」ではなく「学習装置」として捉えることだ。量産を通じて、歩留まり、工程、顧客要求、人材、サプライヤーが改善され、その知識が次世代製品へ戻る。研究開発だけでは、この積分は起こらない。ラピダスやJASMの意義も、単なる国内生産比率ではなく、日本に量産学習の循環を取り戻せるかで評価すべきである。

第3に、装置・素材から中間層・表層への接続を設計することだ。資本参加、共同開発、長期供給契約、M&A、知的財産の共同保有、データ共有を通じて、日本企業が単なる供給者ではなく、需要情報、標準、価格決定、収益分配に参加する構造をつくる。装置の稼働データや工程データを活用した保守、最適化、ソフトウエア、継続課金も、価値捕捉範囲を広げる重要な手段である。

半導体工場のクリーンルームで機械のモニターをチェックする作業員
写真=iStock.com/gorodenkoff
※写真はイメージです

政策評価を投入額から加速度へ

第4に、政策評価を「投入額」から「加速度」へ変えることだ。補助金を何兆円投入したか、工場を何件誘致したかは位置にすぎない。量産立ち上げ期間は短くなったか。民間投資は毎年増えているか。輸出数量、世界シェア、国内調達率、新規顧客数、人材供給、研究から量産までの時間は改善し、その改善速度は上がっているか。政策そのものを微積分で評価する必要がある。

第5に、集中のリスクを統治することだ。集中積分は加速力を生む一方、失敗時の損失も大きい。だからこそ、技術・市場の節目ごとに検証し、継続、修正、撤退を判断するガバナンスが必要になる。支援を始めたから成功するまで続けるのでも、短期の赤字で打ち切るのでもない。長期の学習を守りながら、外部環境の変化へ機動的に対応する仕組みが不可欠だ。

今回のニュースは半導体産業だけの話ではない。自動車、ロボット、医薬品、エネルギー、金融、小売、メディアなど、あらゆる産業に同じ問いが突きつけられている。

経営者は、自社と主要競合について、少なくとも次の7項目を同時に確認すべきである。