加速は、突然にはつくれない

ここまで、位置、速度、加速度、躍度という微分の側から三国を見てきた。しかし、現在の競争力を説明するには、もう一つの視点が不可欠である。それが積分、すなわち蓄積だ。

企業も産業も、ある日突然加速するわけではない。工場、人材、研究開発、顧客との信頼、知的財産、取引先、政策制度、大学教育、失敗から得たノウハウ。それらが長い時間をかけて積み上がり、ある外部の引き金が来たときに加速度へ変換される。

AI特需は突然現れた。しかし、その特需を取り込む能力は突然つくれない。韓国と台湾が2026年に加速できたのは、2025年に意思決定したからではない。1980年代、90年代から積み上げた資産があったからである。

ここで日韓台の蓄積を、「集中積分」と「分散積分」という観点から比較してみたい。

韓国の積分は、サムスン電子とSKハイニックスという巨大企業を中核にした「巨大企業型集中積分」である。

メモリー半導体は市況変動が激しい。価格が急落するたびに巨額の赤字が生じ、それでも次世代工場と研究開発への投資を止めなかった企業だけが生き残る。韓国は政府、金融、財閥が連携し、DRAM、NAND、そしてHBMへ、資本、人材、量産学習を集中してきた。

赤字でも投資を止めなかった

SKハイニックスは2000年代初頭からHBMにつながる積層・実装技術の研究を進め、2013年に世界初のHBMを世に出した。生成AIが爆発した後にHBMへ参入したのではない。需要がまだ小さく、採算性も不透明だった時期から蓄積を続けた。その長い積分値が、AI時代に一気に顕在化したのである。

サムスン電子もまた、半導体部門を中心に年単位で巨額の設備投資を続ける。2025年の全社設備投資計画は52.7兆ウォン、そのうちデバイスソリューション部門が47.5兆ウォンだった。規模の大きさだけではない。不況期にも投資と学習を継続できる企業体力が、次の好況で供給能力となって現れる。

サムスン電子のオフィスビル
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集中積分にはリスクもある。特定企業や特定製品への依存が高まり、判断を誤れば損失も巨大になる。しかし、AIのような需要の急変が来たとき、研究、設備、顧客対応を一つの意思決定で動かし、短期間に供給を増やせる。この大きな積分器が、韓国の加速度を生んでいる。