装置市場も約3.21倍に伸びた
装置は耐久財であり、チップは量産されて繰り返し出荷される。そこだけを見れば、最終需要の伸びが装置需要へ届くまでには、稼働率、在庫、歩留まり、工場建設、設備投資判断を経るという時間差がある。しかし、「半導体需要が増えても装置市場はあまり伸びない」と一般化するのは正確ではない。
世界の半導体市場は、2015年の3352億ドルから2024年の6305億ドルへ約1.88倍になった。一方、世界の半導体製造装置市場は、同じ期間に365億ドルから1171億ドルへ約3.21倍となった。装置市場も大きく成長しており、AI需要は日本の装置・素材企業にも確実に届いている。
ただし、ここで成長率だけを見てはならない。2024年の絶対額では、半導体市場は製造装置市場の約5.4倍である。2015年からの増加額も、半導体市場が2953億ドル、製造装置市場が806億ドルで、約3.7倍の差がある。
装置市場は成長率では半導体市場を上回っていても、市場の母数が小さい。そのため、日本が装置で高い競争力を持っていても、韓台が強い集積回路ほど輸出総額を大きく押し上げることは難しい。
強いのに、果実が取れない理由
さらに、日本の問題は価値連鎖の一部では強くても、その前後を含む価値の捕捉範囲が狭いことにある。
装置・素材の利益は日本企業が取る。しかし、チップの量産売上は主に韓台企業が取り、GPUの設計利益、クラウド利用料、AIモデル、顧客データ、アプリケーションの継続収益は主として米国企業が取る。日本は深層で不可欠な価値を生んでいるが、AI投資からサービス利用まで続くキャッシュフローの複数地点を押さえられていない。
したがって、日本がAI特需の果実を取り切れない理由は、需要が装置・素材まで届かないからではない。日本が強い市場の絶対規模が相対的に小さく、チップ、設計、データ、サービスまで価値捕捉範囲を広げられていないからである。
問題は需要の「減衰」ではなく、市場規模の差と価値捕捉範囲の断絶なのである。

