点の支援では加速度は生まれない
もちろん、日本が何もしていないわけではない。
ラピダスは次世代ロジック半導体の国内量産を目指し、LSTC(技術研究組合最先端半導体技術センター)は研究開発を支える。熊本のJASMを核にした地域集積、産業技術総合研究所の次世代半導体研究拠点、各地の人材育成とサプライヤー集積も進み始めた。
政府は2030年度までにAI・半導体分野へ10兆円以上の公的支援を行い、50兆円超の官民投資を誘発する枠組みを掲げる。これは集中積分へ向けた重要な一歩である。
しかし、個々のプロジェクトが存在することと、一つの積分器として機能することは同じではない。
研究開発の成果は量産へつながっているか。量産は国内外の顧客設計と結びついているか。装置・素材企業は開発初期から共同最適化に参加しているか。製造したチップは国内のデータセンター、ロボット、自動車、AIサービスに使われ、利用データが次の設計へ戻るか。資金支援は単年度の設備投資で終わらず、次世代への学習ループをつくるか。
これらが分断されたままでは、予算と工場を積み上げても、産業の加速度は生まれにくい。必要なのは、点の支援ではなく、需要から設計、量産、装置・素材、計算基盤、AIサービスまでを循環させる構造である。
韓国型もTSMC型も真似できない「型」
では、日本は韓国の財閥型をそのまま模倣すべきなのか。あるいは、TSMCと同じ企業を一からつくるべきなのか。そうではない。各国の制度、企業史、資本市場、人材流動性は異なる。過去の成功モデルをコピーしても、日本では機能しない。
日本が採るべき道は「選択的集中積分」である。
国家戦略の核心――分散した強みを守りつつ、成長市場ごとに需要・量産・要素技術・人材・資本を束ねる『積分器』をつくる。
分散積分が持つ多様性、専門性、強靱性は捨てない。その一方で、国家的に重要で世界需要の大きな市場を選び、その市場ごとに明確な積分器をつくる。すべてを一社へ集めるのではなく、需要側の企業、量産企業、装置・素材企業、大学・研究機関、金融、政府を、共通のロードマップと成果指標で束ねるのである。
第1に、積分の起点を「技術」ではなく「世界需要」に置くことだ。

