沖縄では、レンタカーが旅の足として欠かせない。だが観光客の急増に伴い、長い待ち時間が常態化していた。大混雑を解消できる「改善」があるはずだ。現場のどこに、稼働率を下げる原因があったのか。

トヨタの現場の強さコロナ禍の危機が加速させた改善

トヨタのホームページにあるトヨタ生産方式についての解説を読むと、冒頭にはこう書いてある。

「働く人をより働きやすく、楽にすることを前提に、『お客様にご注文いただいたクルマを、良い品質で、安く、タイムリーにお届けするために、徹底的にムダを無くし、リードタイムを短くする』ことを目的にしたものです。この生産方式を、トヨタ自動車のクルマやサービスなど、あらゆる分野で追求し、全従業員で日々改善を積み重ねています。」

同方式については、ここにある通りなのだが、「日々改善」とは「毎日、必ず改善している」という意味ではない。みんな、普通の人間だ。「毎日、改善しよう」「毎日、勉強しよう」とは思うものの、改善しない日だってある。改善を伝道する生産調査部、TSL(トヨタ・セールス・ロジスティクス)推進部のエキスパートたちでさえ、現場の人間に「なぜ、毎日、改善しないんだ」ととがめるようなことはしない。改善は長期間、行うことだ。自分のペースで自分が気づいた時にやる。

だが、誰もが必ず毎日、改善と向き合う時期がある。

それは危機の時だ。トヨタの人たちは誰に言われなくとも、危機になると日々、改善を進める。やらざるをえないのではなく、危機のにおいをかぐと、自主的に改善に取り組んでしまう。トヨタの現場の強さはここにある。

わたしが見ていて、改善がぐんと進んだのはコロナ禍の時だった。生産現場では密を避けるためにラインの人員配置を変えた。生産、物流の現場ではベルトコンベア、スラットコンベアからAGV、AMRという自動搬送機への置き換えが一気に進んだ。おそらくコロナ禍以前から計画されていたものだったろうけれど、コロナ禍を機に、時計の針を進めたのだろう。

危機になると生産が止まったり、生産量が減る。現場の人間たちの作業も減る。時間に余裕ができるのである。すると、彼らはいつもよりなお深く考える。目の前のことだけでなく、将来まで考えて、そして、大きな視野で改善を行う。トヨタの実態を見るのであれば平時よりも危機の現場を訪ねたほうがいい。危機の現場で何が起こっているかを実体験すると、トヨタという会社の体質を理解することができる。トヨタがリーマンショック、リコール問題、東日本大震災、コロナ禍といった危機から脱却して、成長したのは、危機の時期に広い視野で考え、改善したからだ。

そして、トヨタレンタリース沖縄がレンタカーの待ち時間を減らす改善に着手したのは、沖縄が「危機」の真っ最中にあるからだ。沖縄の「危機」は今後も長期間にわたって続くだろう。

観光客が増えるほどレンタカーが追いつかなくなる

トヨタレンタリース沖縄の「危機」とは観光客の沖縄への入域が増えていること、それに合わせてレンタカーを借りる人が年々、増えていることだ。

2025年、沖縄県に入域した観光客の数は次の通りだ。

(イラストレーション=浅妻健司 撮影=本誌編集部)

検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます