「旅の力」を活用した新しい文化交流

3つの事業のうち、現時点では「インハウス事業」の売り上げがもっとも高く、12年度で全体の57%を占めている。ただし、伸び率ではインバウンドやアウトバウンドが上だ。いずれは伸び率のいいこの2つの事業で50%以上を占める形に持っていき、20年には4500億円の売り上げを目指す。問題は人材だ。

図を拡大
事業別売上高の実績

「我々が全世界に持っている拠点というのは日本のマーケットを基準につくってきたところが大半なので、難しい面はありますね。具体的に言うと、カナダを拠点に中国や韓国のマーケットを取ろうとすれば、中国人や韓国人もスタッフとして必要になる。オペレーションの手法も国によって変わらざるをえない。どうリメークしていくかが課題ですね。その意味で、効果があるのはM&Aです。カナダのバンクーバーでは、中華系マーケットでは規模が大きい現地のシルクウェイという会社をM&Aしました。それによって、カナダにいる中華系のお客様をアジア方面に送客していますし、香港や中国などアジアのお客様をカナダに誘致するときにもその会社が窓口になるんです」

図を拡大
売上高構成比の推移

インバウンド事業は、訪日インバウンドで拡大を図る。鍵を握るのがDMC戦略だ。DMCとはデスティネーション・マネジメント・カンパニーの略。地域が持つさまざまな課題を「旅の力」を活用して解決することを目指した、新しい文化交流の形だ。JTBグループ本社旅行事業本部観光戦略部長の塩見正成は言う。

「これまでの旅行業は地域の中でお客様を外にお連れする発地型のビジネスモデルでしたが、これからは着地事業も重視します。地域の方と一体になり、地域資源の魅力を再発見し、日本全国、世界各国からの集客を促すことで、地域活性化を図る活動を展開していくのがDMC。評価指標を変え、いくら店舗からお客様をたくさん別の場所に送り出しても、それだけでは評価されなくなりました」