「困ったときはJTB」と持っていきたい

JTBコーポレートセールス 
代表取締役社長 
川村益之

この危機感は、法人営業を担当するJTBコーポレートセールスの代表取締役社長・川村益之も共有する。

「最初にこれは危ないなと感じたのは、20年ほど前に、モチベーションをテーマにした企業コンサルティングの子会社をつくり、アメリカに視察に出かけたときです。インセンティブを扱うマリッツやカールソンといった海外の大手企業は、クライアントに的確なソリューションを提供し、ビジネスパートナーとして対等に扱われている。一方、我々は業者扱い。ああいう会社に生まれ変われなければ、将来はないと感じました。

後に、現在の会社の前身であるJTB法人東京に移ったときにも危機感を持ちましたね。提供するものも、サービスレベルも、営業スタイルも以前とまったく変わっていなかったからです。その危機感は分社化の際にさらに高まった。新興勢力がどんどん法人に進出しているのに従来型のやり方を続けていたら、もう完全に淘汰される。その時点で、私は支店を完全に壊そうと決意しました」

これまでと同じように旅行事業だけを扱うのであれば、既存のノウハウで十分。拠点は多いほうがいい。しかし、「ハラル(イスラムの戒律に従った食品)マーケットを知りたい」「長期間の体験型研修でグローバル人材を育成したい」といった企業や学校、官公庁や自治体の課題に対してソリューションを提供する営業スタイルに転換する場合、個人戦では限界がある。支店は1つに集約させ、組織で顧客の課題を解決する形がベターだ。

この川村の発案は抵抗勢力から猛反発を受けた。支店にはそれぞれ得意分野があり、伝統もある。支店長の権限は大きく、支店中心経営と言われてきた。そこに大鉈を振るおうとしたため、社員はもとより、OBからも反対の声があがった。

「『俺の出身の支店をつぶすのか』とOBには相当怒られましたが、東西の8つの支店をすべて1つに集約し、さらに11年にはJTB首都圏の法人事業とも統合しました。同じマーケットに法人をやっているブランドが2つあるのはおかしい。混乱を招きますからね」

もっとも、組織改編には痛みも伴った。拠点を集約したことで、一時的に混乱が起き、引き継ぎがうまくできずに客を失う事態も起きた。だが、コミッションのビジネスからフィービジネスに軸足を移す以上、付加価値を高め、その価値を認めてくれる客に集中するのは当然の流れだろう。川村は海外における法人営業についてこんなイメージを抱いている。

「国内と同じように、海外のどこでもJTBのブランドを提供したいですね。例えば、法人のある役員が中国へ異動になったら、空港に着いた瞬間にJTBが『いつもお世話になっています。今後は私どもがお世話させていただきます』と出迎え、次にヨーロッパに行ったら、そこでも迎えにいく。極端な例ですが、JTBはどこへ行っても面倒を見てくれる。こういう会社にすべきだと僕は考えます。そのためには全世界で情報を共有していかなければ。法人の中で、『困ったときは電通』ならぬ、『困ったときはJTB』という形に持っていくのが理想です」