アジア市場で圧倒的NO.1ポジション

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日本人の海外旅行の伸びとオフィスの数

川村が描く法人営業の理想像は実現可能か否か。JTBが海外に張り巡らせているネットワークは、34カ国・地域、94都市。これを見る限り、十分にグローバル化しているように見えるが、これらの実態は日本人の海外旅行需要の伸びに合わせて構築してきた「日本人のためのサービス拠点」にほかならない。

これは、70年代からの海外旅行ブームと足並みを合わせて、海外進出した百貨店の例によく似ている。せっかく海外に店を設けながら、日本人旅行客が土産物を買う場所、一息つく場所として機能するだけで、本当の意味で現地に根ざしてはいなかった。景気の悪化や天災で日本人渡航者が減少すれば足元は脆弱だ。大半が閉店に追い込まれた。

JTB執行役員 
グローバル事業本部長 
黒澤信也

海外に拠点を置きながら視線を送る先は日本のみ。この現状にメスを入れようと、田川は13年1月に、グループ全体で20年までに取扱額2兆円、営業利益400億円を目指し、「アジア市場で圧倒的NO.1ポジション」を目標とする「2020年ビジョン」を発表した。成長ドライバーとして位置づけたのが、アジアを中心としたグローバル事業だ。グローバル事業本部長の黒澤信也は言う。

「世界の人の流れの数と伸び率を見ると、アジア・パシフィックの伸び率が高く、20年までに40%近い成長が見込まれています。アメリカやヨーロッパとの行き来も増えてくるし、南米も人の流れが著しく増えている。経済力が上がってきている無視できないマーケットです。M&Aなどの予算はこの3年間で210億円。新興市場に投資をして、さらにここから出てくる消費者を待ち受けて、サービスを提供し事業を拡大する計画です」

グローバル事業は3つにセグメントされている。

1つは、JTBグループから海外に送り込んだ客を受け入れる「インハウス事業」。いわゆる従来型の“グローバル”だ。

2つ目の「インバウンド事業」は、日本以外の国・地域からやってくる客を受け入れる事業と、JTBの旅行商品を扱う他社から送り込まれてくる客をランドオペレーター(宿や観光地などの地上手配を行う会社)として受け入れる事業の2つで構成されている。

3つ目は、海外「発」を扱う「アウトバウンド事業」だ。ここでは、行き先は問わない。日本以外の目的地も「あり」だ。例えば、タイにある日系企業のインセンティブとして、ヨーロッパ旅行を売る、フランス人をJTBのネットワークを使って、アメリカに送り込むという形である。

これまでのJTBのグローバル事業が、日本を基軸にした放射状のスター型だとすれば、これからは中心がない世界発、世界着のネットワーク型。日本人向けビジネスにほぼ終始していた「名ばかりグローバル」から180度の転換だ。