同行する若手職員たちも危険にさらされる

大きな決断を要したのは、戦火を交えているイスラエル、パレスチナ、ヨルダンへの訪問です。慎重な検討の結果、11月2日から5日にかけて各地を回り、外相会談や大統領への表敬、UNRWA本部への訪問などを実行することにしました。現地の状況やリスクが完全には把握できない中での決断でしたが、日本が紛争当事国双方と良好な友好関係を築いてきたことに加え、中東地域の平和と安定が自らの存立に直結する日本の外務大臣としては、ともかく早期に訪問する必要がありました。

訪問の際には、私一人で現地へ行くわけではありません。若手の担当職員も同行することになりますから、彼らの命を危険にさらすことを、外務大臣として覚悟しなければなりませんでした。家族もいる職員たちにリスクや身の危険に関する話をして、納得の上で同行を決断してもらう。これは私自身も大変勇気のいることでした。

出張前日の夕方、同行予定の若手職員に大臣室まで来てもらい、今回の訪問の危険性と意義について話をしました。全てを聞き終わって「わかりました、同行します」と言ってくれた彼らの笑顔を見て、改めて絶対に全員無事に帰って来なければと心の中で誓いました。

イスラエル外相に伝えたこと

現地には3日早朝に着きました。早速、その後9時から40分間にわたり、イスラエルのエリ・コーヘン外相と会談しました。席上、私からはハマスの攻撃による犠牲者やご遺族に対する哀悼の意を表し、負傷者の方々へのお見舞いを申し上げ、ハマスが拘束している人質は即時解放されるべきであるとの日本の考えをお伝えしました。

記者会見でイスラエル、ヨルダン訪問を発表した上川陽子外相=2023年10月31日午後、外務省
写真=時事通信フォト
記者会見でイスラエル、ヨルダン訪問を発表した上川陽子外相=2023年10月31日午後、外務省

そのうえで、ガザ地区の人道状況に対する憂慮も述べました。ガザ地区は外部からの支援なしではすぐに住民が飢餓状態に陥ってしまう状況にあります。これに対しイスラエル側は、自分たちが行っているのはあくまでもハマスへの反撃であり、市民を標的としたものではないと即座に反論しました。しかしガザ地区の人々からすれば生活環境が破壊され、最悪の場合は命を落とすことにつながるのですから、イスラエルの立場、主張を踏まえたうえでも、この点は明確な言葉で指摘せざるを得ませんでした。

さらに邦人の安全確保に関して協力を求めたところ、コーヘン外相も協力を惜しまないと発言され、私はイスラエルの協力姿勢に謝意を述べました。