数百人が「巨大サウナ」にすし詰め

「電気が来なければ、いかに最新のエアコンがあってもただの巨大な箱に過ぎない」ということだ。

国が公表している首都直下地震の被害想定を紐解くと、驚きのシナリオが描かれている。発災直後、首都圏ではなんと約52%、軒数にしておよそ1600万軒が大規模な停電に見舞われると予測されているのだ。

とくに懸念されるのが、電力関係施設へのダメージである。首都直下地震の強烈な揺れや、湾岸部で懸念される大規模な液状化現象などにより、送電網が致命的な打撃を受ける可能性が高い。供給力回復までの計画停電や、火力発電所の被害などが加わると、電力の復旧はさらに遅れるだろう。東京湾沿岸の火力発電所が1カ月程度停止するという想定もある。

最悪の場合、需給バランスが崩壊して広域が完全停電に陥る「ブラックアウト」という過酷事象(※)すら危惧されている。

(※)2018年9月6日の北海道胆振東部地震で起きたブラックアウトが記憶に新しい

電力が絶たれれば、避難所のエアコンも巨大扇風機も使用できない。非常用発電機があったとしても、その燃料の備蓄には限りがあり、長期間の稼働は不可能だ。何百人もの被災者がすし詰めになった真夏の体育館は、あっという間に「巨大サウナ」と化してしまうことも懸念される

被災者の体力と気力を奪う「大断水」

猛暑の中で電気が止まったとき、私たちが次にすがるのは「水」である。水分を補給し、あるいはタオルを濡らして首に巻き、物理的に体を冷やすしかない。しかし、真夏の巨大地震は、その最後の命綱すらも無慈悲に切断しかねない。

避難場所に指定された日本の小学校
写真=iStock.com/Yusuke Ide
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都市の地下には、まるで葉脈のように上水道の管が張り巡らされている。だが、関東平野では、特に人口が密集する低地を中心に分厚い堆積層(軟弱地盤)で覆われており、沿岸部には広大な埋め立て地(人工地盤)が広がっている。巨大地震が発生すれば、液状化による地盤変動により、地下インフラへの甚大な被害が懸念される。

国の被害想定によれば、被災直後には給水対象人口の3割近く、人数にしておよそ1300万〜1400万人もの人々が断水に直面するとされている。暑さをしのぐための水が飲めない。体を拭くこともできない。人口が多い都市部では、救援の給水車が到着したとしても一人当たりの給水量は限定され、猛暑の中で何時間も列に並ばなければならない。その待機列すらも熱中症に繋がりかねない。水分の枯渇は、被災者の体力と気力を根こそぎ奪っていくのである。