小泉内閣で策定されて以来の「方向転換」

止まらない物価上昇で経済への国民の関心が高まる中で、「何がやりたいのか分からない」「対症療法ばかりだ」と批判されてきた高市早苗首相。その経済政策の方向性が明らかになってきた。「経済財政運営と改革の基本方針2026」いわゆる「骨太の方針」で、その姿が鮮明になってきたのだ。

経済財政諮問会議と日本成長戦略会議の合同会議で発言する高市早苗首相。政府は持ち回り閣議で高市政権初となる経済財政運営の指針「骨太方針」を決めた=2026年7月21日、首相官邸
写真=共同通信社
経済財政諮問会議と日本成長戦略会議の合同会議で発言する高市早苗首相。政府は持ち回り閣議で高市政権初となる経済財政運営の指針「骨太方針」を決めた=2026年7月21日、首相官邸

これほど「骨太の方針」が注目されたのも久しぶりだ。「骨太の方針」は政府が毎年6月に閣議決定し、1年間の経済政策の大筋を示す。ここ数年、それぞれの役所が出した政策を単にひとつにまとめる「ホチキス」と揶揄されるようなものが続いてきた。ところが、今年は様相が全く違った。これまでの政府と、明らかに2つの点で方向性が大きく転換されたのだ。小泉純一郎内閣で初めて策定されて以来の「方向転換」と言っても過言ではない。

転換のひとつ目は「財政健全化」に対する方向性だ。

今年の「骨太の方針」は策定に手間取り、6月末になって、ようやく原案が示された。ところが、その中に「『強い経済』の実現に向けては、適切な金融政策運営が行われることも非常に重要」という一文が記されていた。積極財政を掲げる高市内閣は、日銀が進めようとしている利上げに反対し、それを牽制しているのではないか。そんな疑念が金融市場に広がった。財政健全化の後退懸念から円安・債券安が一気に進む事態となり、10年国債利回りは、一時2.9%と約30年ぶりの水準にまで達した。市場では「骨太ショック」とまで呼ばれた。

歴代内閣の目標を取り下げた

結局、例年よりも1カ月遅い7月21日に閣議決定された最終版では表現が修正された。「『強い経済』の実現に向けては」と「適切な金融政策運営が行われることが非常に重要」の間に、「『安定的な物価上昇』の実現に資する」という一文を加えたほか、「政府は、引き続き、日本銀行と緊密に連携し」と、あくまで日銀の独立性に配慮する姿勢を示したように見える。

だが、「財政健全化」に対する姿勢を変えたことは明らかだった。高市首相がこだわる「積極財政への転換」に向けて、「基礎的財政収支(プライマリー・バランス=PB)の黒字化」という歴代内閣が掲げてきた目標を取り下げたのだ。国会閉幕後の首相の記者会見などでもこの点に質問が集まったが、首相は「国際基準に合わせた『財政の持続可能性』を重視する」とし、「債務残高対GDP比の安定的低下」を目指すとした。

新聞各紙は、「下ろされた『健全化の旗』 高市政権で転換した財政運営 骨太の方針」(朝日新聞)、「『財政健全化』初めて言及なし 高市政権、骨太の方針決定」(毎日新聞)と批判的に報じた。