アベノミクスの「成長戦略」とはまるで違う
もうひとつ、大きな「方向転換」が明らかになった。政府が積極的に財政支出をして強い産業を支援するとしたことだ。2040年度までに戦略17分野に官民で累計370兆円超の投資をすることで「強い経済」を実現すると骨太の方針に明記された。
一見するとかつて安倍晋三首相がアベノミクスで打ち出した「成長戦略」に似ているように思える。だが、実際はアベノミクスとは180度方向が違う。アベノミクスは「3本目の矢」で「民間投資を喚起する成長戦略」を掲げた。その手法として「一丁目一番地」として規制改革を打ち出し、岩盤規制を安倍首相がドリルとなって打ち砕き、民間活力を取り戻すとした。つまり、安倍首相は「官」の役割を小さくすることで民の力を最大限発揮させようとしたのだ。
これを高市首相は大転換したわけだ。高市首相は会見でこう語っている。
「世界を見渡せば、『国が一歩前に』出て、官民が手を取り合って重要な社会課題の解決を目指す『新たな産業政策』が大きな潮流となっています」。
これが高市内閣の基本認識のようだ。もはや、グローバル化の中で規制緩和や自由化で民間企業が自力で戦う時代は終わりを告げ、政府が先頭に立って「未来への投資」を行う時代になったというのである。城山三郎の小説『官僚たちの夏』で描いた霞が関主導の産業政策が再び求められる時代が来た、ということだろうか。
「タブー」の一線を越えてしまった
日本経済新聞は骨太の方針が閣議決定された7月21日に、「成長企業に補助金拠出 政府が骨太方針決定、国主導で供給力拡大」というタイトルの記事を掲載した。これまで個別企業への補助金拠出は霞が関のタブーだったが、その一線を越えたことも記事には書かれている。こんな具合だ。
「歴代政権はこれまで個別企業への補助金を当初予算に盛り込むのに慎重だった。企業が技術をテコにリードしても、巨額補助金を国が投じる中国などに追い抜かれて事業から撤退する事態が続いてきた。高市政権は救済目的でなく、供給力の拡大をめざした補助金を出す。単年度にとどまらず複数年度にわたった支援を企業に実施し、企業が設備投資をしやすい環境を整える。新たに「『強く豊かな日本』投資枠」を創設する」

