「成功したニュータウン」の代名詞
東急電鉄が開発を主導した多摩田園都市は、まちびらきから半世紀以上を経ても人口増を記録していた稀有なニュータウンで、世間からは成功したニュータウンと認識されている。そうしたニュータウンでも住民たちの高齢化は避けて通れない。
特に、まちびらき当初から多摩田園都市で生活していた住民たちは、駅から遠い位置の住居に居住していることが多く、そのために外出難民・買い物難民化する傾向が強かった。
多摩田園都市では、東急や小田急、市営バスなどが各住宅地と駅とを結んで走っている。そのバス路線は他エリアと比べても充実しているが、多摩田園都市が築かれた多摩丘陵は起伏のある大地ゆえにバス停から各住宅の玄関口までの移動に大変な労力を伴う。
歩行が覚束ない高齢者やベビーカーを押す若いパパ・ママにとって、短い移動距離といえでも勾配のある丘陵地は身体的に大変な労力となる。
また、まちびらき当初は5階建ての集合住宅でもエレベーターが設置されていない物件が多く、そうした要因も現在に至って外出難民・買い物難民を増加させていた。
インフラが整っていなくても選ばれる東急
集合住宅の改修は範囲外だが、玄関口までの公共交通を整備することは鉄道・バスの事業者である東急でも対応策を講じられる。東急は多摩田園都市に点在する外出難民・買い物難民を解消する対策として、路線バスよりも細かくエリアを巡回できるミニバスの運行を検討した。
ミニバスは少量輸送になるため、効率を考えれば採算面で課題が残る。東急はミニバスの導入に際して、自動運転バスの実証実験を繰り返した。将来的に無人運転を実用化することで採算性を確保する狙いが見て取れるが、目的達成までには時間を必要とするだろう。
多摩田園都市の一部エリアは公共交通が整備されているとは言い難いニュータウンだが、東急というブランド効果も手伝って、今でも根強い人気を誇っている。そうした例外はあるものの、都市圏に形成されたニュータウンは転入してくる住民の多くがサラリーマン世帯のために通勤の便に重心をおいた計画が求められてきた。
コロナ禍でテレワーク・在宅ワークが普及するなど、ライフスタイルや価値観は再び変化する兆しを見せ、それに伴って郊外需要の盛り上がりも観測された。
そうした盛り上がりも数年で沈静化し、現在は都心回帰を強めている。それと同時に公共交通の重要性も再び増している。



