たった20分の差が新たな転入者を遠ざける

繰り返しになるが、ニュータウンの盛衰は何よりも時代に即した変化ができたかどうかという点に尽きる。それを如実に表しているのがセットで整備された公共交通で、もっと端的に表現するなら、「許容できる所要時間」と「乗り換えなどの手間」という点が時代に適合したニュータウンが生き残れたという、身も蓋もない結論になる。

冒頭で触れた千里ニュータウンは、北大阪急行電鉄(北急)や阪急電鉄千里線といった鉄道が域内を走っている。北急はOsakaMetro御堂筋線と直通運転をしているので、千里ニュータウンから大阪駅まで乗り換えることなく20分前後で移動できてしまう。千里ニュータウンには同じく阪急電鉄千里線も走っているが、こちらでも乗り換えは1回、所要時間は同じく20分前後だ。

北大阪急行電鉄
撮影=小川裕夫
※北大阪急行電鉄は2024年3月に延伸を果たした(2024年3月)
千里ニュータウンを走る北大阪急行電鉄
撮影=小川裕夫
※千里ニュータウンを走る北大阪急行電鉄。背後に高層マンションが立ち並ぶ様子からも、千里ニュータウンの活気が窺える(2024年3月)

昨今は東京・大阪といった都市圏では都心回帰現象が鮮明になり、郊外の人気は落ちている。それは、ひとえに「通勤・通学に時間を割きたくない」「休日にお出掛けするにも便利な街(駅)がいい」といった声が多数を占めるようになっているからだ。

そうした状況を鑑みると、同じ大阪府内でも堺市・和泉市にまたがる泉北ニュータウンは繁華街の難波駅・天王寺駅まで約40分を要するので、どうしても遠いという印象を抱かせてしまう。それが新たな転入者を遠ざけている。

髙島屋も大型スーパーもあるのに…


泉北ニュータウンは1967年にまちびらきし、ニュータウンの足として泉北高速鉄道が建設された。当初は南海電気鉄道(南海)が泉北ニュータウンの公共交通を担う予定だったが、諸般の事情から大阪府が出資する第3セクター鉄道が役目を担った。

泉北高速鉄道は中百舌鳥駅から南海に乗り入れて、難波駅まで直通する。2025年4月に泉北は南海に統合されて南海泉北線となり、より一体感が増して利便性も向上した。また、中百舌鳥駅からは御堂筋線に乗り換えて天王寺駅にもアクセスできる。決して泉北ニュータウンの公共交通事情は悪くない。

泉北ニュータウン内には、まちびらき当初から老舗百貨店の髙島屋が店舗を構え、そのほか日用品を扱う大型スーパーも多く立地している。生活インフラの充実ぶりは申し分なく、ニュータウンで生活に困ることがないように工夫されていた。

泉北ニュータウンには老舗百貨店・髙島屋が立地
撮影=小川裕夫
※泉北ニュータウンには老舗百貨店・髙島屋が立地(2025年4月)

残念ながら、そうした配慮は新たな住民を呼び込む訴求力として弱い。行政は新住民を呼び込もうと再生に向けた活性化策を打ち出しているが奏功していない。結局のところ、遠いという理由がニューファミリー層から敬遠される。