大阪では「遠い」が、東京では「許容」

他方、近距離にある千里ニュータウンは新陳代謝がうまく進み、昨今は千里ニュータウン以遠でもニューファミリー層の流入が進む。沿線の宅地化を受けて、北急は2024年3月に千里中央駅から箕面萱野駅までを延伸開業。この延伸開業は、さらなるファミリー層の流入を促進することになった。

昨今は都市圏でも鉄道の収支が思わしくなく、鉄道事業者も自治体も鉄道の新設・延伸には後ろ向きになっている。そうしたネガティブな風潮の中で、同区間は約2.5キロメートルと短いものの延伸を果たし、駅前には商業施設や大学などが立地する。北急延伸区間は、“ニュー”ニュータウンともいえる住宅地になっている。

距離による所要時間に対する捉え方は、時代だけではなく、地域によっても異なる。泉北ニュータウンは大阪市の繁華街まで乗車時間40分前後で遠いと受け止められてしまうのに対して、東京圏では60分がおおよその目安になっている。

東京圏では稲城市・多摩市・八王子市・町田市の4市にまたがる多摩ニュータウンが1971年にまちびらきした。多摩ニュータウンは広大なために都心部までの所要時間は各エリアで大きく異なるが、おおむね多摩ニュータウンから新宿駅までは約40分、東京駅までは約60分となる。

多摩センター駅
撮影=小川裕夫
※多摩ニュータウンの中心的な駅として整備された多摩センター駅

多摩vs神奈川・埼玉・千葉

東京圏において、約60分の所要時間はギリギリ許容範囲内に収まっているが、それでも遠いというイメージからファミリー世帯の流入は思わしくない。所要時間だけを比較するなら隣接する神奈川県・埼玉県・千葉県でも60分未満で通勤できるエリアはある。わざわざ遠いニュータウンを選ぶよりも、東京に近接した交通至便の街・駅を選ぶというファミリー層は少なくない。

東京に近接しているとはいえ、都外になると住居費は格段に安くなる。それら住居費と諸条件を比較考量すると、多摩ニュータウンを選ぶ積極的な要因は見出しにくい。

泉北ニュータウンと多摩ニュータウンは大阪と東京を代表するニュータウンで、曲がりなりにも公共交通は充実している。

それでは名古屋圏はどうなのか? 名古屋圏にも高度経済成長期にいくつかニュータウンが計画・造成されたが、そのなかでも桃花台ニュータウンは公共交通が整備された人工都市だった。

桃花台ニュータウンは名古屋圏に属しているとはいえ、その立地などからマイカー通勤者の方が多いようにも考えられるが、それでもニュータウン計画において公共交通の整備はマストとされた。