若者や現代社会を解釈できるかのように言うが…
「とんでもない気持ちにさせられた」(上田氏)り、「子供と親の感覚がかなりかわるはず」(鈴木氏)といったように、素直な感想を吐露しているだけなのかもしれない。この率直な思いを表明する姿に、世代間のギャップがあり、そして、この映画のヒットの理由がある。
それは、「なんか小さくてかわいいやつ」が、「あんな話」であったり、「とんでもない映画」であったりするところから、いまの若者や、ひいては現代社会を解釈できるかのような錯覚を与えているからではないのか。
先に触れたように、この映画は「ネタバレ」の危険がない。というよりも「ネタバレ」を前提として、その答え合わせをしにいくかのようにスクリーンの前に座っている人が多いと見られる。スマホでレビューに触れてから、原作に忠実なところに安心した上で、その高評価を確かめるかのようにチケットを購入する。
多くの観客にとっては、それで十分なのだろう。強いて言えば、そうした「答え合わせ消費(※1)」の象徴と言えなくもない。けれども、そこには世代の隔たりはあれど、いまの日本社会を読み解くヒントは、どこにもない。
社会学者が陥りがちな批評や考察に、まったく馴染まない、ただ面白い、それだけに素晴らしい作品にほかならない。
ジブリも新海誠もいない「夏映画の空白地帯」
メディア論の専門家として言えば、ちいかわの映画は、夏映画の空白地帯をピタリと埋めたところが大きい。スタジオジブリや細田守監督、新海誠監督といった、これまで夏休みに話題作を発表してきた巨匠たちを、今年は見られない。「トイ・ストーリー」の最新作(『トイ・ストーリー5』)がヒットしているものの、30年の歴史をふまえた第5作目であり、初心者にはハードルが高い(ように思われがちである)。
「ちいかわ」は、この点では、これまでXをはじめとして親しまれてきた作品であり、週に2回、「めざましテレビ」で放送されている。YouTube(ユーチューブ)やTikTok(ティックトック)の公式アカウントだけではなく、世界中で数えきれない人たちが、目にしてきた。私が鑑賞した回も、「ちいかわパーク」近くの劇場だったこともあって、大きな買い物袋を抱えたインバウンド客の姿も散見された。
こうした、興行戦略と世界展開、といった状況証拠を積み重ねれば、大ヒットの要因の解釈としては及第点なのかもしれない。
けれども、もっとこの作品そのものが問いかけている要素があるのではないか。それは、日本人にとっての「アニメ」の意味であり、「キャラクター」の存在である。
※1:Reika.「答え合わせの消費」

