完璧じゃないけど「かわいい…」
起きている時間をすべてミシンに使う毎日が続きました。YouTubeで糸の通し方を調べ、手を動かし、失敗したらほどいてまたやる。
1週間で直線が縫えました。2週間で、ミシンにあらかじめ入っていたロケットの図案が刺せました。2、3センチの、小さなロケット。できあがりを見て、私は思いました。「かわいい……」。
線はゆがんで形も少し頼りない。それでも、自分の手が作ったものを見てそう思ったのは、初めてでした。我が子同然、という感覚でした。それは、初めて育てた観葉植物に名前をつけたくなる感覚に近いかもしれません。
完璧じゃない。でも、自分の手が時間をかけたものには、少しだけ命が宿る。
その感覚を、私は外銀時代に一度も持ったことがありませんでした。ゼロから何かを生み出す。その瞬間にしか生まれない感情があります。計算が当たったときの快感とも、数字が合ったときの達成感とも、まったく種類が違う。手元から来る、静かで確かな感情です。
答えを探す方法は「やってみること」
もし今、自分でなくてもいい仕事をしていると感じているなら、一度だけ試してみてほしいことがあります。
何でもいい。小さくていい。自分の手だけで、何かを最後まで作りきってみる。その瞬間に生まれる感情が、次に選ぶ仕事の手がかりになるはずです。
直線が縫えるようになると、次の壁が見えました。技術と、商品の間には、まだ大きな距離がありました。自分が「かわいい」と思えるものを作れるようになるには、どのくらいかかるのか。見当もつきませんでした。
答えを探す方法は一つ。やってみること。
お金がいつ尽きるかわからないまま、1日18時間、起きている時間はすべてミシンの練習に充てたのです。
色が重い。線が固い。犬の目が笑っていない。才能というより、見えるものが増えていく感覚でした。最初は、何が違うのかすら見えません。でも40作も作ると、ピントの合っていない写真が、少しずつ鮮明になっていくみたいに、「違和感」が見えてきます。

