ダミー会社を使って機密保持者を狙う

逮捕、捜査、警告、ドメインの差し押さえが切れ目なく表面化し、各国の防諜機関が同じ脅威を名指しするようになった。ではなぜ、習近平政権が国力強化のために広げた情報網は、世界各地で露見するようになったのか。

それは中国のスパイ活動が「秘密の世界」から、人材市場、大学、コンサル契約、通信インフラという日常へ染み出したからだ。勧誘の舞台が、冷戦映画のような密会から、誰もが使う求人サイトやSNSへと移行している。

2026年6月3日付で公表された英国保安局(MI5)の共同警告「Safeguarding Our Secrets」では、中国の軍情報機関がオンライン採用担当者やコンサルタントを装い、中国国外の企業に見せかけたダミー会社を通じて、機密情報や内部限定の情報に触れる人物を狙うと説明している。

2026年6月5日付で公表されたカナダ安全情報局(CSIS)の同警告では、対象として安全保障上の資格保有者、防衛・外交・情報分野の専門家、インド太平洋地域に関わる軍関係者、政府情報に間接的に触れる研究者、ジャーナリスト、シンクタンク職員などが列挙された。

“求人サイト”で「スパイ勧誘」が行われる

LinkedInやIndeedなどで最初の接触を持ち、まず公開情報のレポートを書かせて信頼を築き、やがて非公開情報の提供へ誘導する流れも示されている。

この構図は、会社員にも大学の研究者にも見覚えがあるだろう。副業、顧問、講演、調査レポート、海外コンサル。なかには高い報酬や給与を謳っているものもある。入り口はどれも合法に見える。相手方は最終的な依頼主を明かさず、「公開情報をまとめるだけ」と持ちかけ、少しずつ職務上の知識や人脈へ踏み込んでくる。スパイの勧誘は、転職、副業、キャリアアップの顔をして現れるのだ。

各国当局が警告を公表するのも、もはや水面下の摘発だけでは事態を抑えきれない段階に入ったからだ。手口を公にすれば、標的になりうる人々自身が違和感に気づき、企業や大学も内部研修や通報窓口を整えやすくなる。公表は外交上の抗議であり、防諜のコストを社会全体に分散する作戦でもある。

米司法省(DOJ)と米国連邦捜査局(FBI)も、同じ手口を実際に摘発している。2026年6月10日付で発表された米司法省の資料によれば、当局は米政府や軍の現旧職員らを狙った13のインターネットドメインを差し押さえた。偽のコンサル会社サイトは求人広告や人工知能(AI)生成画像を使い、守秘義務のある情報を引き出そうとしていたという。

コンピューターを使用してAIと対話
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