× 介護や葬儀はそのときの身の丈で
○ イメージ通りの最期にはお金がかかる
多くの人が誤解している「きれいな施設」の費用
「介護付きの施設は、必要になったときに、払える範囲で探せばいいだろう」と安易に考えるのは危険です。自分の希望通りの最期を迎えるには、思っている以上にお金がかかるものです。人生の最期に「こんなはずではなかった」と後悔することのないよう、必要なお金と仕組みを準備しておきましょう。ひとりの場合は、急に倒れて入院が必要になったり、認知症で判断能力が衰えてしまったりしたとき、誰かに手続きをしてもらわなければなりません。それを見据えた段取りも必要です。
私が女性の相談者さんからよく聞くのは、「自宅にひとりで住めなくなったら、最期まで満足して暮らせるきれいな施設に入りたい」という希望です。そのうちの多くの方は、いくら必要になるのかをイメージできていません。
介護付きの高齢者施設には、公的な施設と民間の施設があります。公的な特別養護老人ホーム(特養)などは費用が抑えられますが、原則として入所対象者は要介護3以上に限られます。また、待機者が多くてすぐに入所できないのが実情です。そこで、民間の「きれいな施設」への理想を突き詰めていくと、いわゆる「高級老人ホーム」の水準になりやすく、費用はかなり高額です。大手の施設では、85歳以降の入居であっても入居一時金が2000万円以上、さらに毎月の利用料が20万円台後半から30万円程度かかるのが一般的です。公的介護保険には、自己負担が一定額を超えた場合に払い戻される「高額介護サービス費」という制度もありますが、施設の居住費や食費などは対象外となるため、毎月の支払い額はそれほど下がりません。「最期は施設で」と決めているなら、早めに情報を収集しておくのが賢明です。
いざ介護が必要になったら、自治体の「地域包括支援センター」に相談しましょう。要支援・要介護認定の申請窓口となっているだけでなく、保健師、社会福祉士、ケアマネジャーなどの専門家がチームとなり、必要な援助や支援をしてくれます。
また、自身の葬儀やお墓、遺品整理にかかる費用も用意しておきましょう。墓石にこだわるのか、マンション型の納骨堂や樹木葬を選ぶのかによって必要な費用は数十万円から数百万円まで大きく変動します。まず、自分が「どのように見送ってほしいか、どんな墓に入りたいか」を具体的に描き、そのために準備すべきリアルな金額を把握することから始めてください。どんな供養を望むかは本人の価値観の問題ですから、正解はありません。こうした費用を自分の死亡保険金として用意し、親族を受取人に指定しておく方法もあります。
おひとりさまの場合、お金の用意と同等かそれ以上に重要なのは、最期に頼れる人を決めておくことです。もしあなたが認知症になって口座が凍結されてしまえば、せっかく用意したお金を自分自身のために使うことができません。保険金の請求も同様です。
もし頼れる親族がいない場合は、専門家や民間サービスの活用を検討しましょう。生前の財産管理や生活支援を任せる「任意後見契約」(公正証書の作成と家庭裁判所の手続きを要する制度)、死後の葬儀や遺品整理、各種手続きを担う「死後事務委任契約」を結んでおくことで、自分の望む形でお金を使う仕組みをつくることができます。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2026年8月14日号)の一部を再編集したものです。
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