「ひとりぶんの生活費は、何とかなる」――その油断がピンチを招く。定年専門FPが、家計に潜む罠とその回避策を伝授する。
落とし穴⑤ 最期の費用
× 介護や葬儀はそのときの身の丈で
○ イメージ通りの最期にはお金がかかる

多くの人が誤解している「きれいな施設」の費用

「介護付きの施設は、必要になったときに、払える範囲で探せばいいだろう」と安易に考えるのは危険です。自分の希望通りの最期を迎えるには、思っている以上にお金がかかるものです。人生の最期に「こんなはずではなかった」と後悔することのないよう、必要なお金と仕組みを準備しておきましょう。ひとりの場合は、急に倒れて入院が必要になったり、認知症で判断能力が衰えてしまったりしたとき、誰かに手続きをしてもらわなければなりません。それを見据えた段取りも必要です。

私が女性の相談者さんからよく聞くのは、「自宅にひとりで住めなくなったら、最期まで満足して暮らせるきれいな施設に入りたい」という希望です。そのうちの多くの方は、いくら必要になるのかをイメージできていません。

介護付きの高齢者施設には、公的な施設と民間の施設があります。公的な特別養護老人ホーム(特養)などは費用が抑えられますが、原則として入所対象者は要介護3以上に限られます。また、待機者が多くてすぐに入所できないのが実情です。そこで、民間の「きれいな施設」への理想を突き詰めていくと、いわゆる「高級老人ホーム」の水準になりやすく、費用はかなり高額です。大手の施設では、85歳以降の入居であっても入居一時金が2000万円以上、さらに毎月の利用料が20万円台後半から30万円程度かかるのが一般的です。公的介護保険には、自己負担が一定額を超えた場合に払い戻される「高額介護サービス費」という制度もありますが、施設の居住費や食費などは対象外となるため、毎月の支払い額はそれほど下がりません。「最期は施設で」と決めているなら、早めに情報を収集しておくのが賢明です。

(構成=向山勇)