陣営がもっていた2.2億人のデータ
Facebookとブラッド・パースケールの合同チームは、商業広告主向けにFacebookが設計したデータツールを使ってユーザーをマイクロターゲティングし、エンゲージメントを最大化するため、広告に細かな調整を重ねた。
私が理解するかぎりでは、トランプ陣営は“プロジェクト・アラモ”というデータベースを構築し、2億2000万人を超えるアメリカ人のプロファイルを蓄積していた。銃の登録状況、選挙人登録情報、クレジットカードや購買の履歴、閲覧したウェブサイト、所有車両、居住地、最後の投票日など、オンライン・オフライン双方の行動データを網羅していた。
トランプ陣営はFacebookの〈カスタムリストからカスタムオーディエンスを作成する〉機能を使い、そのデータベースに登録されている個人とFacebookのアカウントを照合した。次にFacebookの〈類似オーディエンス〉アルゴリズムを用いて、既知のトランプ支持者と“共通の特性”を持つ、見かけ上“似ている”ユーザーを抽出した。
つまり、トランプ支持者が特定の種類のピックアップトラックを好むとすれば、同じ種類のピックアップトラックに関心を示しているが、まだ投票先を決めていないユーザーを探して広告を表示する。
広告の文言からボタンの色まで微調整
次にトランプ陣営は、そのターゲティング戦略とメッセージテストで得られたデータとを組み合わせた。「国境に壁を建設せよ」というメッセージに反応しそうな層にはまさにそのような広告を、育児に不安を抱えている母親にはトランプ政権下では「保育費が100パーセント税控除対象になる」という広告を見せた。
さらに、広告の文言から画像、〈寄付〉のボタンの色に至るまでのディテールを絶えず微調整する専門チームも設置されていた。ごくわずかな違いでも、響く相手はまるで異なるからだ。
選挙期間中、トランプ陣営はつねに数万種類の広告を同時進行で展開していた。最終的には数百万種類にもなった。そういった広告は、Facebookの〈ブランドリフト〉調査を使ってテストされ、ユーザーが広告のメッセージをどれだけ理解したかを測定し、その結果に応じた調整が行われた。
多くの広告には扇動的な誤情報が含まれており、それがエンゲージメントを押し上げ、同時に広告単価を引き下げた。人々が広告に反応すればするほど、広告費は安くなる。Facebookのツール群とVIPサービスの組み合わせにより、メッセージと受け手の両方について驚異的な精度のターゲティングが実現した。まさに広告の理想型と言えるだろう。

