各都市にビアホールが続々と誕生
ビール自体の品質の向上と歩調を合わせるように、ビール文化もまた劇的な変化を遂げている。その最前線ともいえるのが、平壌をはじめとする都市部に次々と誕生している大型ビアホールの存在だ。
直近で平壌の和盛地区に新設された「和盛大同江ビール店」の姿は社会主義国家のものとは思えない。店の外には夜空に映える巨大なジョッキ型のモニュメントが鎮座し、市民たちがスマートフォンで楽しげに記念撮影に興じている。店内は1階には広大なホールがあり、2階には個室、さらにビリヤード台まで完備された現代的なエンターテインメント空間もある。洗練されたカウンターに並ぶタップからは数種類の生ビールが注がれ、中でも市民の一番人気は口当たりの良い「2番」だという。
こうしたビアホールでの定番スタイルは、日本のビジネスパーソンが親しむ「立ち飲み居酒屋」や「センベロ」のような感じだ。客たちはビールジョッキを片手に、干し明太(スケトウダラ)を無造作に手で裂き、タレにつけて頬張りながら談笑する。テーブルの上には、厨房でカラリと揚げられた西洋風のフライドポテトもある。
文明的で豊かな生活の象徴として
注目すべきは、この活気に満ちた大衆酒場文化が、平壌から地方都市へと波及している点だ。金正恩総書記は「各道の所在地(中心都市)に、平壌の『大同江ビール店』のような立派なビール店を構築するように」と直接指示を下しており、実際に中朝国境の羅先市には「豆満江ビール店」が開業した。
ビールを痛飲できるビアホールという空間そのものを「首都並みの文明的で豊かな生活」の象徴とし、それを地方住民にも享受させることで格差感や不満を和らげるのは、とても有効な政策なのかもしれない。
いずれにしても、北朝鮮の人々も我々と同様に美味いビールを飲んで他愛もない話をして、生活のガス抜きをしているのだろう。

