偉大な経営者から学んだ「ビジネスの王道」

――経営者として、強く影響を受けた方はいらっしゃいますか。

【大倉】考え方では、パナソニック創業者の松下幸之助さんと、京セラの稲盛和夫さんです。ビジネスモデルでは、ダイエーの中内㓛さんですね。あと、引き際の美しさでは、ホンダの本田宗一郎さんです。子どもに継がせない去り方はすばらしいと思いました。

共通しているのは、「王道経営」というか、どこから見られても恥ずかしくない経営をされていることです。それは絶えず意識していますね。正しく経営していこうと。

――正しく、ですか。

【大倉】以前よくあったんですが、たとえば、あるビルに出店しようとすると、同じビルの同業者から「あの店を入れないでくれ」と圧力がかかることがあるんです。それで実際に出店できないこともありました。でも僕は、その逆だけは絶対にしないぞと。出店したい相手がいれば、「どうぞどうぞ」と。競争があってこそ、お客様にとっていい店ができるので。

――まだ会社が小さく、立場も弱かった30代の頃から、その姿勢は崩さなかったんですか。やられっぱなしで悔しくはなかったですか。

【大倉】悔しかったですよ。大きな看板をわざと置いて、うちの看板を隠されたこともあります。管理会社に言うと「ちゃんと置き場所が決まっている」というんですけど……。直接クレームを入れたら、店長は「わかってるんです。でもこうしなきゃ会社に怒られる」と言うんです。そんなことを社員にさせておいて、「誇りを持て」「社員教育だ」と言ったって、無理な話でしょう。

「されど焼鳥屋」になれた日

――「たかが焼鳥屋」という悔しさが、報われたと感じた瞬間はありましたか。

【大倉】2014年、上場記念のパーティーに社員の家族をお招きしたときです。北は北海道から南は九州まで来てくださって。お見送りのとき、ある親御さんに「いい会社ですね」と言っていただいた。あれは本当にうれしかったですね。「ああ、されど焼鳥屋になれたのかな」と思えた瞬間でした。

――最後に、今まさに壁にぶつかっている若手になにか伝えるとしたら。

【大倉】「今が成長するチャンスだよ」と言いますね。人生もビジネスも繰り返すものです。いいことが続けば、必ずどこかで悪いことが起こる。僕はもうそれに動じなくなりました。「ああ、やっぱり来たか」と。順調なときほど、そう長くは続かないものです。

逆に、悪いときも、必ず過ぎていきます。それを知っているから、また絶対にいい時が来ると思える。だから腐らないで、全力を尽くしながら待ちましょう。

大倉社長は、壁にぶつかったときこそ「成長するチャンス」だという
撮影=水野浩志
大倉社長は、壁にぶつかったときこそ「成長するチャンス」だという
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