なぜ文京区の有名公立小にこだわるのか

25年、東京・御徒町にある不動産会社、Worth Land(ワースランド)代表取締役の杉原尋海さんに聞くと、最近来日した中国の富裕層は「東京都文京区○○の1丁目から4丁目の間でいい物件はないか」とピンポイントで物件を探すのだという。理由は明確で、「3S1K」と呼ばれる有名公立小学校のいずれかに子どもを入学させたいからだ。「3S1K」とは文京区の誠之せいし、千駄木、窪町の4つの公立小学校の頭文字をとっている。

文京区立窪町小学校
文京区立窪町小学校(画像=Nesnad/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

文京区は東京大学やお茶の水女子大学などの名門校があり、保護者の教育レベルや所得レベルが高く、文化水準が高いとされることから、この4つの小学校に子どもを入学させたいと考える保護者が多い。日本人でもわざわざ引っ越してくる人がいる。

こうした情報を新・新華僑は中国のSNS、小紅書や抖音ドウインで得る。東京に土地勘がなく、知人も少ないためSNSを重視し、仲介業者(ブローカー)が発信する情報に飛びつきやすい。

たとえば、「東京で富裕層が住む区の上位ランキング」といったSNS動画や記事を見て、「富裕層の自分にふさわしい地区に住むべきだ」と考える。また中国の学区房(いい学校がある地区の不動産)と同じ感覚で、日本の不動産を探す。

中国人親のSNSグループに飛び交う情報

一方、日本にしっかりとした生活基盤がある新華僑は、小紅書や抖音を見てはいるものの、その情報を鵜呑みにはしない。自分のなかにそれなりの判断基準があり、他からも情報を得られるからだ。

新華僑の人たちが頼りにするのは、小学生の子どもを持つ教育熱心な同世代の中国人保護者によるネットワークだ。ある知人は、「鶏娃ジーワー(=教育熱心な親)」というSNSグループに入り、そこだけで共有される情報を参考にしている。以前の著書でも紹介したが、そのグループ内では、「3S1K」に限らず、さまざまな地区の小中学校、学習塾、オープンキャンパスなどの情報が飛び交っている。

「私たちは文京区にはこだわりません。一番多いのは地元の一般公立小学校に入学させ、学習塾に通わせて、私立(中学校)受験というパターンです。私立小を受験する人もいますが、それほど多くはありません。私たちは日本に長く住んでいるので、目先の受験よりも、子どもの人生のロードマップをどう描くかを考えています。

公立(小学校)から私立(中高)なら、日本の高いレベルの教育を受けられるし、インターナショナルスクールに入れれば大学は欧米になります。自分たち夫婦が将来も日本に住むなら、子どもも日本に軸足を置かせる選択が現実的です。そういうふうに考えていますので、『文京区の有名公立小』という選択は上位にはきません」