批判の根本は「利権アレルギー」

こうした重要な役割を果たしているJAなのに、なぜ批判ばかりを浴びるようになってしまったのでしょうか。その最大の理由は、メディアや一部の専門家が、JAを「農家の協同組合」ではなく「巨大な既得権組織」としているからです。

確かにJAグループは、農産物の流通・販売、資材の供給だけでなく、銀行業務(JAバンク)、保険業務(JA共済)などを担う日本有数の巨大組織です。さらに全国の組合員や准組合員を合わせると1000万人を超える規模で、その社会的影響力が非常に大きいことは間違いありません。こうした規模の大きさから「農家のための組織」というより「農業政策を左右する存在」と受け止められることがあるのです。

近年では、米価高騰や農林中央金庫の巨額損失報道などをきっかけに「農業の問題はJAが原因ではないか」という見方が広がりました。

実際のところ、米価高騰などの農業問題にはさまざまな要因が関わっています。しかし、私たちは複雑な現象に直面すると、何か一つのわかりやすい原因を求めがちです。明らかな悪者がいる物語はわかりやすく広まりやすいため、多くのメディアがそうした取り上げ方をします。その結果、本来は政府政策、気候変動、市場環境、人口減少、高齢化など複数の要因によって生じている米価高騰も「JAが悪い」と断罪されてしまうのです。

「農政トライアングル」への批判

また、以前から日本の農業を衰退させたのは、JA、農林水産省、農林族議員が強く結び付いた「農政トライアングル」だという批判が存在します。この三者による利権構造において、「JAが農政を牛耳っているから日本農業は衰退している」「農水省は農林族議員を通じてJAに間接支配されてきた」などといわれているのです。

【図表】農政トライアングルの仕組み
筆者作成

確かに、この三者が農政に大きな影響を与えてきたことは事実でしょう。しかし、近年の米価高騰や農村の疲弊までもを、JA利権や搾取という文脈で取り上げることは、到底正しい認識とはいえません。日本農業が抱える問題をすべて「農政トライアングル」のせいにしてしまうのは危険です。なぜなら、それでは戦後の日本の農政がどう形作られてきたのかという、より大きな歴史的背景が見えなくなってしまうからです。