今の農業の問題は誰のせいか

戦後まもなくの日本は、深刻な食料不足に直面していました。一方、アメリカは小麦やトウモロコシなどの農産物を大量生産し、余剰処理に悩んでいました。そこでアメリカは安全保障と農産物輸出を組み合わせた外交戦略を展開。余剰農産物を同盟国へ供給し、その国の市場を育てることで、将来の輸出先を確保しようとしたのです。

こうした流れの中で、日本はアメリカ産小麦や飼料穀物を大量に受け入れました。学校給食へのパンの導入や畜産物の振興もその延長線上にあり、結果として日本人の食生活は米中心からパンや肉類を多く消費する方向へと変化したのです。さらに戦後の国際環境の中で、日本が工業化を優先し、土地利用型作物を輸入に依存する道を選択したということもあります。

つまり、日本の食料自給率の低下、麦・大豆生産の衰退などは、JAが引き起こしたものではありません。さらにいえば、1970年代の減反政策、1991年の牛肉とオレンジの輸入自由化など、日本農業を大きく左右した出来事の多くは国家レベルの政策判断でした。

むしろ、今日の農業・農村の姿を理解するためには、JAと自民党農林族と農林水産省の「農政トライアングル」よりも、アメリカと財界と政府主流といった、より大きな「権力トライアングル」の構造を見なければならないでしょう。

【図表】農政を左右する権力トライアングル
筆者作成

JAにも問題がないとはいえない

もちろん、JAにも問題がないとはいえません。組織の硬直化や改革の遅れ、時代に合わなくなった部分への批判には耳を傾ける必要があります。

例えば、JAが金融事業(JAバンク)や保険事業(JA共済)に依存し、本業である営農・経済事業の収支改善が遅れており、「個々のJA独自の取り組み」はあっても「統一的・全体的な取り組みがなされていない面がある」ことが指摘されています。また、部門ごとの改善は進んでも、組織横断の改革が進まないことも問題視されているのです。

金融や保険の機能も、地方地域のインフラ的側面を持つJAにはなくてはならないものです。ただし、その収益に依存し、営農部門や経済部門を惰性で行っているJAもあり、それは改善されるべきでしょう。

しかし、日本農業の衰退や農村の疲弊をすべてJAの責任にするのは、あまりにも筋違いな見方です。大きな問題の原因を、JAという一つの組織に押し込めてしまえば、本当に検証すべき戦後農政の歴史、農業政策の問題点が見えなくなります。そうした誤った理解の上で、これからの食料安全保障や農業政策について正しい議論をすることは不可能でしょう。