1台売るごとに190万円超の赤字

価格戦争で恩恵にあずかるはずの消費者も、結果的に危うい立場に置かれている。中でも最大級の悲劇に見舞われたのが、昨年報じられた新興EVブランド「Neta(哪吒)」の事例だ。

2022年、Netaは新興EV勢の年間販売台数で首位に躍り出た。15万2000台を納車したと、36Krは報じている。

Netaのコンパクト電動SUV「Neta U」
Netaのコンパクト電動SUV「Neta U」(写真=Jengtingchen/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons

だが、Netaが急成長を遂げられたのは、いわゆる赤字モデルに頼っていたからだ。採算を度外視し、1台売るごとに赤字を垂れ流してでも、ひたすら売上台数を伸ばす戦略だ。親会社・合衆新能源は2021年から2023年にかけて累計183億元(約4360億円)もの純損失を計上した。36Krによれば、1台売るごとに平均8万元(約190万円)超を失っていた。

Netaは資金が底をつくと、一気に事業モデルが崩壊した。2024年後半には従業員への給与を払えなくなり、生産も停止している。同年12月、張勇CEOが退任した。

後任には創業者の方運舟会長が就いたが、同氏にも事態を好転させることはできなかった。昨年6月19日、親会社の浙江合衆新能源汽車が正式に破産手続きに入った。債権者は計265億8000万元(約6330億円)にのぼる負債を申し立てている。

40万人が「修理難民」に

浙江合衆の破産は、約40万人の哪吒汽車オーナーの暮らしを直撃した。オーナーたちは、「自分の車がいつ動かなくなるか分からない」との恐怖に慄いている。

昨年5月ごろから、中国全土のオーナーがアプリのダウンに見舞われている。36Krによると、スマートフォンからの遠隔操作が一切効かなくなり、車載ネットワークのデータ更新も停止。カーナビの位置情報すら取得できなくなった。

Netaの大規模障害は、半年で実に3度目を数える。2025年初頭、「システムメンテナンス」を名目に公式サイトが72時間にわたってダウンした。4月にはアプリが再びクラッシュし、Bluetoothキーが反応しなくなった。車の外に締め出される人、車内に閉じ込められる人が続出した。

危うい兆候は、2024年後半にはすでに表れていた。全国に300カ所以上あったアフターサービスの拠点が次々と閉鎖され、2025年時点で残るのは50カ所に満たない。実に6分の1以下にまで縮んだ計算になる。

36Krが引く北京商報は、コンパクト電動SUV「Neta U」の女性オーナーのケースを取りあげている。購入時には「航続距離400km」と謳われた車だったが、わずか2年でバッテリーの持ちが大幅に落ちた。保証修理を正規ディーラーの4Sショップに求めたところ、返ってきたのは、「メーカーと連絡が取れない」の一言だったという。

やむなく自費で修理した後、損切りを覚悟で売却を試みたが、査定額は5万元(約119万円)にも届かない。購入価格14万元(約333万円)に対し、失った額はその6割超。わずか2年の使用で、価値の大半を失った。