「名湯巡り」より「歌うこと」を選んだ理由
そこから得たのが、次の5つの人生教訓だ。
①「大好きなこと」より、「大切なこと」に時間を使う
「大好きなこと」は自己完結的で、そのときどきの感情に左右されやすいものだ。
これに対して「大切なこと」は、身近にいる大切な人をはじめとした「他者の存在」がつねに頭にあり、「その人たちのために自分に何ができるか」という気持ちと意志を働かせるものとなる。
そう捉えてみると、「大好きなこと」を優先させる人生よりも、「大切なこと」を優先させる人生のほうが、豊かなのではないだろうか。
Aさんは昔、温泉が好きで名湯巡りを趣味にしていたそうだ。
でも、ギターを弾いて歌うと周りの人たちが喜んでくれる。「だから僕は歌を選んだ」と。Aさんにとって温泉は「大好きなこと」だったが、弾き語りは「周りを幸せにできること」だった。ここで後者が「大切なこと」だと気づき、そのために生きる選択が、Aさんの人生をより豊かにしたわけだ。
一度きりの人生、自分がワクワクすることをしよう、という考え方もあると思う。まず自分を幸せにすることの重要性も理解できる。
しかし、それだけでは、どこまでいっても自分本位な人生になってしまう。ベクトルが自分にしか向いていない。言ってみれば、“狭く閉じた人生”だ。
Aさんの話を聞いて、僕は一度きりの人生だからこそ、自分自身の幸せを考えながらも、もっと大きな意味や使命感を探究していきたいと思った。それを見出すことが、結局は自分自身の幸せにも還元されるのではないか、と。
以来、僕は「周りが喜ぶことは何か」「自分には何ができるか」を、自分自身に問いかけながら生きている。
あえて何もしない時間を確保する
②大切なことを見つけるには、「自分と向き合う時間」をつくる
では、どうやって「大切なこと」を見つければいいのだろうか。
僕が思うに、それには「自分と向き合う時間」が必要なのではないか。
つねに時間に追われている毎日では、「自分ができることで周りが喜ぶことは何か?」などと、自問自答する余裕はもてない。だからどんなに忙しくても、あえて何もしない時間を確保して、自分と対話する必要があるのだ。
さて、「自分との対話時間」を確保できたら「自分の大切な人は、自分が何をすれば笑顔になるだろうか」「周囲を笑顔にするために、自分ができることは何だろうか」「自分が今、この世に生きている意味は何か」を、問いかけてほしい。それは、自分の人生を見つめ直す根源的な問いになる。
こうした問いと向き合うには、スマホをOFFにし、パソコンも閉じて、あらゆるデバイスから距離を置きたい。30分でも1時間でもいい。情報を遮断した静けさのなかで自分の人生を見つめ直せば、きっと「大切なこと」が見えてくるにちがいない。

