貧乏だった「旅館の少女時代」

1936年(昭和11年)2月、山口市湯田温泉にわずか6室の「常盤旅館」を創業したのは、高美さんの祖母、宮川常盤さんだ。

それから8年経った1944年に高美さんが生まれ、その後2人の妹も誕生した。一家が暮らすのはボイラーの隣の一室。大きな音が響いて、宿題をすることすらままならなかった。

旅館の経営と家計を握っていた祖母は、家族には厳しく、他人には優しい人だった。気の弱かった母は、旅館の皿洗いや洗濯、障子の張替えなどで一日中働き通し。一方、祖母は人を招いては花札に興じ、気前よく食事をふるまった。そのため家はいつも貧しく、父のポケットには小銭しか入っていなかった。