モスクワで始まったガソリンの給油制限

製油所への相次ぐ攻撃を受け、ロシア国内の燃料供給は目に見えて揺らぎ始めた。これまで戦争とはほぼ無縁であった大都市も、ついにその余波を免れなくなっている。

モスクワ・タイムズが6月15日に伝えたところでは、ロシア第5位の石油会社タトネフチは、首都圏を含む全国約800カ所のスタンドで、給油制限に踏み切った。数日前のドローン攻撃を受けてのことだ。

ロイター通信によると、モスクワ南部ではガソリン20リットル、軽油40リットルという上限が課されている。給油制限の報を受け、タトネフチ株はモスクワ取引所で3%超下落した。

これとは別に、ラトビアに拠点を構えるロシア語独立紙のノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパによると、5月末にはモスクワの地域事業者ORTKが、ガソリン1回60リットル、軽油100リットルの購入上限を導入している。大手のルクオイルとガスプロムも、1顧客あたり100〜150リットルの上限を設けた。

アルジャジーラによると、ロスネフチも90リットルの給油制限を導入し、携行缶へのガソリン販売を禁止している。買いだめを警戒した措置とみられる。公式には「季節需要の増加」を理由に掲げるが、実際には供給危機を見据えての防衛策であることは明らかだ。

サンクトペテルブルクも例外ではない。ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパによると、近郊のキリシ製油所はウクライナのドローン攻撃を繰り返し受けており、ロイター通信によれば5月5日以降、操業は完全に停止したままだ。子会社のキリシアフトサービスが、一部スタンドで1顧客あたり50リットルの制限に踏み切った。

「2日間給油できていない」住民の悲鳴

首都圏よりさらに深刻な事態に陥っているのが、ロシアが2014年に併合したクリミア半島だ。

モスクワ・タイムズによると、ロシアが任命したクリミアのセルゲイ・アクショーノフ知事は6月初め、ガソリンの現金販売を全面的に停止すると表明した。

代わりに導入していた燃料バウチャーも新規発行を打ち切り、「近いうちに再発行することはない」という。市民は燃料を手に入れる手段を、次々と奪われていく。同知事は、不足が少なくとも7月まで続く可能性があるとも警告していた。

すでにバウチャーを持つドライバーでさえ、買えるのは1台あたり20リットルまでに制限されている。当局はすべてのスタンドに人員を張りつかせ、ナンバープレートを逐一記録する入念な対策を実施中だ。

当局が統制を強める一方で、市民は切実な状況に追い込まれている。ポーランド公共放送国際ニュースチャンネルのTVPワールドがロイターの取材を引いて報じたところでは、最大都市セヴァストポリ在住のオクサナ・センチェンコさんは、「もう2日間、給油できていない」と窮状を訴える。「市内を走り回ってみたが、オクタン価92(レギュラー相当)も95(ハイオク相当)も、ガソリンがどこにもない」と彼女は言う。

ガソリンスタンドの車が列に並んでいる
写真=iStock.com/Apriori1
※写真はイメージです

ロシアが任命したセヴァストポリのミハイル・ラズヴォジャエフ知事は、テレグラムの投稿で、燃料備蓄の増強に「昼夜を問わず」取り組んでいると強調した。

調達が困難となった原因については「安全対策の強化と物流ルートの最適化の必要性」によるものだと述べるにとどめ、具体的な説明を避けた。