プーチンが認めた「経済への打撃」
こうした現実を前に、プーチン大統領が珍しく弱みを見せた。ウクライナの攻撃で自国経済が打撃を受けていると、公の場で認めたのである。
6月18日の攻撃でモスクワの製油所が大規模な火災に見舞われると、プーチン氏は「ウクライナ軍の攻撃はロシア経済を傷つけている」と認めた。
アルジャジーラによるとプーチン氏は、「敵は社会を分断し経済的打撃を与えるため、航空機型無人機の使用を増やしている」と言及。ただし、「すべては素早く回復している」と付け加え、楽観的な見通しを国民に示した。
だが、そんな強弁を裏づける現実はどこにもない。ほかならぬロシアのエネルギー省がガソリン不足を認め、ドローン攻撃を原因に挙げたと、モスクワ・タイムズは報じている。
ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパによると、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官も先月、「特定の地域で」生産が低下した可能性を認めていた。ただしその際、ペスコフ氏は「全国的な燃料不足のリスクはない」と主張していた。
実際には「特定の地域」どころの話ではない。アルジャジーラが引用した独立系メディア「ザ・ベル」によれば、すでにロシアの行政区画の半数以上にあたる53の地域と占領下のウクライナにまで、ガソリンの配給制が敷かれている。
4月以降、ロシアはガソリン輸出を全面禁止し、航空燃料の輸出禁止にも踏み切った。
戦費を注ぐほど弱体化していく
今年4月、プーチン氏は政府高官をクレムリンに呼びつけた。製造業も工業生産も建設も、すべて前年比マイナスだと数字を突きつけ、異例の叱責を浴びせたのだ。
これ以前にもロイター通信によると、プーチン氏は今年1〜2月にロシア経済が1.8%縮小したと認めている。2023年に4.1%、2024年に4.9%と高成長を謳歌してきたロシアだが、昨年は1%にまで減速した。
国庫の柱である石油・天然ガス収入の落ち込みも大きい。独立系ロシア語ニュースサイトのメデューザが報じたロシア財務省のデータによれば、2026年第1四半期の石油ガス収入は、前年同期比45.4%の急落。歳入全体も8.2%縮んだ。
一方で、歳出は17%増加している。わずか3カ月で財政赤字は4兆5800億ルーブル(GDP比1.9%。日本円で約9兆5700億円。7月1日現在のレート、1ルーブル2.09円で換算、以下同)に膨らみ、通年で3兆7900億ルーブル(同1.6%。約7兆9200億円)の赤字に抑える目標だったが、これを早々に突破した。
それでもロシアは軍事費を膨らませ続けている。アルジャジーラが報じたドイツ国際政治安全保障研究所のロシア経済専門家、ヤニス・クルーゲ氏の分析では、第1四半期の国防費は前年同期比で30%増えた。GDP比では、昨年の7.8%から今年は6.2%に抑える計画だったが、実際には10%に達する勢いで、歳入の実に3分の2を軍事費に注ぎ込んでいる計算になる。
ロシアは戦争に資金を注ぎ込み続けているが、その戦争によって国家収入の生命線である石油インフラは破壊されていく。ロシアは、戦費を強化するほど自らの収入源を失っていく悪循環に陥っている。


