100キロ先まで届いた黒煙

モスクワの南東約185キロメートルの距離にある、リャザンの街。製油所への攻撃で、住民の暮らしは大きな打撃を受けた。

リャザン石油精製所
リャザン石油精製所(写真=svtk44/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

ロシア独立系英字紙のモスクワ・タイムズによると、5月の大規模なドローン攻撃では少なくとも4人が死亡。子どもを含む数十人が負傷した。リャザン州のパベル・マルコフ知事によれば、ドローンは2棟のアパートと産業施設を直撃している。

標的となった産業施設は、国営石油大手ロスネフチが運営するリャザン石油精製所で、年間約1700万トンの原油を処理していた。

現場上空には巨大な煙の柱と激しい炎が立ち上った。NASAの衛星画像には、黒煙が隣接するタンボフ州まで100キロメートル以上にわたって広がる様子が映し出されている。日本で例えるならば、東京から富士山の麓、御殿場まで届くほどの距離だ。

リャザン在住の27歳のオルガさんが、同紙の取材に当時の様子を語っている。攻撃は「非常に大きな音」で、近所の窓ガラスがびりびりと震え、車のアラームが一斉に鳴り出したという。

「精製所に勤める親族がいる友人から聞いたのですが、攻撃が100回以上あったそうです。従業員は出勤しないよう言われたと」

通信アプリのテレグラムのニュースチャンネルでは、黒い油混じりの雨が街路に降り注いだとされる画像が拡散した。リャザン州のパベル・マルコフ知事は安全上の理由から、市内一部地区の学校や幼稚園に閉鎖を命じている。

国家財政を蝕む「精製能力の低下」

なぜ、ここへ来て多くの製油所で精製能力が失われているのか。その理由は、ウクライナがドローン戦略を根本から変えたことにある。

コモディティ市場データ分析企業のクプラーは昨年12月、「ウクライナの製油所の狙い方は根本的に変わった」と報じた。単発の攻撃成功でよしとせず、戦略上重要な製油所を繰り返し叩き、ロシアの精製システム全体をじわじわと締め上げる戦略へとシフトしたという。

ウクライナは製油所を攻撃した後、修理が始まったころを見計らい、復旧が終わる前に再び攻撃する。これを2〜3週間おきに繰り返す。ロシア側はそのたびに修復箇所が増え、やがて追いつかなくなる。安定して稼働させない戦略だ。

ロイターが指摘するように、ロシアの歳入のおよそ4分の1は、石油・ガス関連の税収だ。精製能力が削られるほど、国民の暮らしだけでなく、国家の財政が蝕まれていく。