上司が気づかない部下の心の闇
マネジャーの思考傾向の影響は人間関係を通じて波及していき、職場で直接交流している人々だけでなく、はるかに広範な人々にもおよぶということだ。だが、多くのマネジャーはこれを認識していない可能性が高い。同僚がつながっている家族や友人たちにも波及するのである。ますます多くの研究で確認されていることだが、社員が職場で経験するストレスは職場の外に伝わって家族の機能や幸福を損ない、子どもの学業成績に影響することさえある。
部下を管理する最善の方法は彼らにいつも気を張り詰めさせておくことだと考えているマネジャーは、しょっちゅう無理な要求をし、部下を人前で叱り、プラスのフィードバックはほとんど与えず、情報を伏せたままにする。このような行動はそれにさらされる社員にストレスを生じさせる。こうした社員は、夜職場から帰宅すると怒りやイライラを表に出す可能性が高い。彼らの配偶者のストレス・レベルは上昇し、結婚生活の質は低下する。彼らの子どもは、怒鳴りつけられるのが嫌で夜はその親のそばに近寄らなくなり、子どもの心理的適応は阻害される。影響はこのように、学校やコミュニティにもおよぶのだ。
幸いなことに、職場におけるポジティブな人間関係にも強い波及効果がある。前向きで、人の考えに進んで耳を傾け、人を信頼する思考傾向を持つ人は、同僚たちの間に感情資源を築くように行動し、そうした感情資源が同僚たちの家族の幸福や機能を豊かにするのである。