民族団結法という「新たな武器」
習氏が改めて台湾統一に並々ならぬ決意を示した日、中国では、この日に合わせたかのように、とんでもない法律が施行された。「民族団結法」(正確には「民族団結進歩促進法」である。
この法律は、中国13億人の国民全員に、「中華民族共同体意識」の強化を植えつけることを目的にしたもので、標準中国語の普及を推進することなどが明記されている。
もともとは、チベットや新彊ウイグル自治区で暮らす少数民族を資金面で支援してきたアメリカのNED(全米民主主義基金)を牽制するために法整備が検討されてきたものだ。
NED自体は2期目のトランプ政権で解体されたものの、「民族団結法」はアメリカ以外にも矛先が向いていることに注目しなければならない。
第63条に、海外の組織や個人が「民族団結を損なう行為」を行った場合、「法律上の責任を追及する」と定められているのだ。
つまり、チベットやウイグルの人々の文化や伝統、それに言論や表現の自由を法律によって厳しく制限したり、外国の支援団体を罰したりするだけでなく、日本で暮らし習指導部の政治姿勢や外交姿勢を批判し続けている筆者のような外国人も「犯罪者」として扱われる可能性があるということだ。
日本からの中国批判も射程範囲に
6年前、香港で施行された「香港国家安全維持法」を思い出していただきたい。
「香港国家安全維持法」も、反政府的な動きを弾圧するために制定された悪法で、中国当局からすれば、言論やデモの締めつけに一定の効果があったとされているが、「民族団結法」は、国内で湧き上がる批判以上に、日本やアメリカなど国外からの批判をも標的にしているところが脅威だ。
「先生、中国に捕まえられたりしないの? 大丈夫なの?」
筆者が教壇に立っている大学の学生からもこんな声が聞かれるほどだ。「民族団結を損なう行為」の定義が曖昧で、中国当局の胸三寸で「何でもあり」なところが、何とも不気味で恐い部分である。
その中国にとっては、来る2027年が、中国軍(人民解放軍)創設100年の節目に当たる。同年秋には、習氏の共産党総書記としての4選がかかる党大会が予定されているほか、台湾では、今年11月の台北市長選挙を経て、来年は、2028年1月の総統選挙に向けた選挙戦が本格化する。
これらの重要な政治日程を前に、この法律の存在が、誰も習氏の方針に文句を言えず口を閉ざしてしまう社会の到来につながりはしないか危惧するところである。

