「受験戦争、兵役を乗り越えたのに…」

理由の1つは、フェミニズムが浸透したことへの強い反発である。文在寅政権から青年男性の保守化が本格化し、「イデナム(20代男性)」という造語で呼ばれた。兵役によって約2年間を国家に捧げた男性が、除隊後に就職で得られていた加点制度がフェミニズムの批判で縮小されたことへの怒りが根底にある。

※朝日新聞「韓国の若い男と女はなにに怒っているのか 深刻化するジェンダー葛藤」(2025年5月10日)

2つめは、経済停滞が続いている原因を、革新系政権に求めていることだ。高い若年失業率・不動産高騰・激烈な受験競争という閉塞感の中で、同世代の女性が相対的に台頭しているように見えることへの焦りが反発として表出している。

3つめが与党「共に民主党」に対する反発だ。伝統的な革新政治に対する反発から共に民主党に対して敵愾心を持ち、それに対抗するイデオロギーを求めているのである。これは、日本における参政党の躍進と重なるところがあり、「新保守層の台頭」現象とでも呼ぶべきものだろう。

「不動産から株へ」戦略に急ブレーキ

「ヘル朝鮮(地獄の韓国)」とは、若い世代が韓国社会の閉塞感を自嘲した言葉だ。その閉塞感の源泉となっているのが、韓国における不動産問題だ。

韓国においてソウル、特に都心の江南の不動産保有は単なる資産運用ではない。どの学区に住むかで子どもの教育が決まり、教育が人生を決める韓国では、江南の不動産はアクセス権の購入であり、階級証明書だ。

ソウル漢江大橋と江南アパート
写真=iStock.com/july7th
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「持つか持たないか」が人生の分岐点になるこの構造こそが、韓国の若者が「ヘル朝鮮」と呼ぶ閉塞感の正体に他ならない。不動産の有無によって、階級が分かれていると言っても言いすぎではない。

李大統領はこの構造を改革するための政策として「不動産から株へ」を公約した。不動産に固定されている家計資産を株式市場に誘導することで、「コリア・ディスカウント」(韓国株の割安)を解消しながら、不動産への資金流入を遮断して価格を下げるという構想である。

当初、この戦略は機能した。韓国株式市場KOSPIは、李大統領が選挙戦で掲げた目標5000を大きく上回り、5月には取引時間中として初めて8000の大台に乗せた。李大統領は「資本市場の正常化が現実のものとなったように、亡国的な不動産共和国の解体も決して越えられない壁ではない」と自信を示した。

※日本経済新聞「韓国、6月3日に統一地方選挙 株価最高値で革新系与党に追い風」(2026年5月31日)

だが、6月23日、KOSPIは前日比9.99%急落し、過去最大の下落幅を記録した。SKハイニックスが12.47%、サムスン電子が12.31%急落し、時価総額約78兆円が一日で消失した。

※BigGo ファイナンス「韓国KOSPI、1日で910ポイント暴落…過去最大の下げ幅『暗黒の火曜日』」(2026年6月23日)

真面目に資金を株に移した国民が大損するという、最悪の政治的結末だ(また、この中には、「階級」を乗り越えるために、借金して株を買った者もいるはずであるが、その悲劇は今後、報道に載ってくるだろう)。

今後の動向次第では、家計部門に深刻なダメージを与え、韓国経済にも悪影響が拡がりかねない。