「選挙の女王」が9年ぶりに復活

2つめの逆風は与党圧勝の予測そのものだ。序盤は与党の圧勝が予想されたが、各地で与野党候補が競り合っているとの調査結果が出たことで、有権者が投票に行こうとする心理が働いた。「どうせ与党が勝つ」という空気が与党支持層の緊張感を緩め、危機感を持った保守の投票率を高めたわけである。

3つめの逆風は、朴槿恵パク・クネ元大統領の復帰だ。「選挙の女王」との異名を持つ朴槿恵氏が、弾劾から9年ぶりに国民の力候補の応援演説に立った。大邱・慶尚道の高齢保守層に火がつき、眠っていた保守支持層が目覚め始めた。尹錫悦ユン・ソンニョル前大統領の弾劾によって完膚なきまでに叩きのめされたかに見えた保守層が存在感を示したのである。

朴槿恵氏の肖像画
朴槿恵氏の肖像画(写真=대한민국 국가기록원/KOGL Type 1/Wikimedia Commons

※ハンギョレ新聞「韓国地方選挙で李明博・朴槿恵元大統領が前面に…保守野党からも『中道層に悪影響』」(2026年6月1日)

4つめの逆風は投票用紙不足という行政的失態だ。ソウル市長選では複数の投票所で投票用紙が不足し、「不正選挙だ」と抗議する有権者が投票箱の搬出を阻止、開票に計40時間以上かかった。

※日経新聞「ソウル市長選などの開票終了 投票用紙不足への抗議で40時間超」(2026年6月5日)

この行政ミスが選挙に与えた直接的影響はごく軽微ではあろうが、尹前大統領が不正選挙を根拠に「非常戒厳」を宣言した過去がある韓国では、選挙不信を再燃させ、勝った側である与党にも「失われた選挙」への疑念を与え、禍根を残している。

李在明大統領が狙う「司法改革」3本柱

李在明政権は司法改革を進めているが、その実態は、独立した捜査・起訴権限を政権が掌握するという露骨な権力強化策である。いくつもの疑惑を抱える李大統領が進めているのだから、「被告人が自分の裁判を無効化する」という構図である。

李在明政権の「司法改革」は大きく3つの柱がある。

① 検察庁の解体・再編

政権の国政企画委員会は検察庁を廃止し、起訴を担う「公訴庁」と捜査を担当する「重大犯罪捜査庁(重捜庁)」を新設する改革案を発表した。

「検察の強大な権限を分散・制御する」という建前だが、実態は日本の地検特捜にあたる政治経済の重要事件を担当する組織を政権のコントロール下に置こうというものだ。法務省の「脱検察化」も推進され、これまで検察出身者が独占してきた主要ポストには非検察出身者を起用する方針が示されている。

※AFP「韓国・李在明政権、検察庁を廃止へ…『検察改革の青写真』公訴庁と重大犯罪捜査庁を新設」(2025年8月14日)