受け手の印象に残る言葉はどのようにつくられるか。編集者の佐渡島庸平さんは「『ドラゴン桜』というタイトルを考える前、初め僕は『東大へ行こう』という案を出した。ただ面白そうな『印象』がなかったので、何が印象に残るのかということを熟知している著者の三田紀房さんと話し合った結果、このタイトルに決まった」という――。

※本稿は、佐渡島庸平『編集者のフィードバック』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

安田講堂 東京大学
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感想は作家との「コミュニケーション」

感想は、本来とても個人的で主観的なものだ。何をどう感じるかは人それぞれで、そこに正解はない。僕は読書会をやっているが、そこでは誤読大歓迎。誤読をきっかけに会話が盛り上がることも多い。

しかし、編集者として、感想を言う時は目的がある。感想を通じた作家との「コミュニケーション」だ。

「面白い」や「良かった」だけでは、創作を前に進める力にはなりにくい。

感想は、作家に違う視点を差し出す鏡であり、売上を上げるという目的のためのフィードバックでもある。

そもそも僕は、作家の原稿が上がってきたら、どんな原稿も「面白い」という前提に立って読もうとする。

完成した原稿には、作家の熱意が詰まっている。なぜ、それだけの熱意を作家は持てたのか。作家は、何十時間も、その原稿に費やしたのだ。もしも、街中で行列している人がいたら、何にそこまで熱狂しているのだろうと興味を持つのと同じだ。完成している原稿には、作家の熱がある。

その熱を読み解けると、どんな原稿も面白い。

そして、その面白さを、多くの人に伝わる表現方法に改善することができれば、ヒットする。作家が自分で描き直したくなるように、アドバイスではなくて、感想を言う。原稿を読むとは、作家の熱を読み取り、それを多くの人に届けようとする行為だ。

雑談に見える僕の感想は、実は次の4つしか言っていない。この4つを、言葉を変えたり、組み合わせを変えたりして、作家が腑に落ちるまで話しているだけだ。

「要約」「印象」「意図」「マーケット」。

まずは、この順番で感想を組み立てると、伝えるべき内容が自然と整理され、打ち合わせの軸がぶれにくくなる。型として定着すれば、自分の思考の偏りに気づくチェックリストにもなる。

本稿では、そのうちの「印象」について、詳しく話していく。