市場は契約書通りには動かない

例えば、35歳でローンを組み、25年後(60歳)で、予定外の事情で売却を検討することになったとします。1億円で購入した住宅の残りのローンは約2900万円、設定されていた「残価」は3000万円でした。

想定はもちろん、「ローンの残債+残価3000万円での売却」です。

ところが、耐震性能や断熱性能の不足、十分なメンテナンスが施されていなかったことが査定に影響し、市場評価は1800万円にとどまってしまいました。その場合、差額1200万円は自己負担として一括精算が必要になります。

手元資金が不足すれば、老後資金を取り崩すことになるのです。

「残価3000万円」という数字は、あくまで契約上の想定値です。市場は契約書を読みません。実際の査定額が下回れば、その差は丸ごと自分の問題になります。月々の返済が抑えられていた分、この落差はセカンドライフの資金計画を一気に狂わせることになります。

変化の激しい時代において、30年間一度も住み替えや売却を検討しないと想定すること自体が、もはや現実的とは言えません。こうしたケースに備えて、住宅を建てる時点で「将来的な資産価値」をしっかり考えることが重要になります。

では、どんな家なら安心なのか。

将来の資産価値の見極め方

住宅の評価を左右するのは、単に「新築だったか」「価格が高かったか」ではありません。重要なのは、建物自体の性能の高さです。過去の連載記事の中でもお話してきましたが、1億円を超えるような高級住宅だから、性能が高さが保証されているわけではありません。

たとえば木造戸建住宅であれば、断熱や耐震といった性能が高くても、気密性能、永続性のある防蟻処理や施工品質、定期的な点検といった維持管理などが不十分であれば、住宅の評価が大きく下がる可能性がたかくなります。

残クレを利用するための要件となっているものとして「長期優良住宅(現行ZEH水準である断熱等級5)」という基準がありますが、これを満たせば安心かというと、そういうわけではないという点には注意が必要です。

※断熱性や省エネ性、耐震性、メンテナンス性などについて、将来にわたって評価されやすい住宅の一つの目安とされています。

例えば前に触れた「気密性能」は、そもそも基準自体が含まれていません。そもそも、市場評価を左右するこうした枠組み自体がこの先何十年も変わらない保証もありません。

(気密性能については、過去記事「こんな“暑くて寒い家”が合法的に建てられるのは日本だけ…喘息・アレルギーを起こす「日本住宅」のお粗末」で詳しく解説しています)

また、分譲マンションであっても、立地条件や管理状態、将来の修繕負担の見通しによっては、当初想定していた残価が、そのまま評価されるとは限りません。