住宅は“金融商品”になりつつある

ここまで見てきたように、いまの住宅問題の核心は、「価格が高い」ことではなく、「価格に対して信用が届かなくなった」ことにあります。

そして、その信用の正体は突き詰めれば家計の所得と手取りです。

住宅価格が上がる一方で、給与水準や可処分所得が同じペースで伸びていれば、多くの世帯は無理なくその価格を受け入れられたはずです。

ところが現実には、住宅価格だけが先に上がり、給料と手取りが追いついていない。ここに、いまの「買えない問題」の本質があります。

本来であれば、このギャップは賃金の上昇で埋めるべきものです。

しかし賃金政策は時間がかかる。

そこで国が選んだのが、「住宅の価値を金融で支える」というアプローチでした。住宅を「いくらで買えるか」ではなく、「将来いくらの価値が残るか」で評価する。

残クレ住宅ローンは、その象徴的な制度です。住宅の将来価値をあらかじめ組み込むことで、市場価格を大きく崩さずに取引を成立させようとしているのです。

つまり、いま日本の住宅は、住む場所であると同時に、金融商品として扱われ始めているといえます。

この視点を持たずに「月々の返済が安いから」と残クレを使えば、将来の価値が残らない住宅を高値でつかまされるリスクを背負うことになります。

クレジットカードと明細を見る老人
写真=iStock.com/Abdullah Durmaz
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なぜ「将来の価値」が重要なのか

残クレ住宅ローンを理解するうえで、最も重要な前提があります。

それは、「すべての住宅が同じように将来価値を持つわけではない」という事実です。

残クレは、契約通りの期間住み続け、想定された使われ方と管理がなされている限り、通常の経年劣化だけで直ちに問題が生じる制度ではありません。

残価設定月(出口)を迎えた際の選択肢は2つあります。

① 買取オプション:残価を買い取ってもらい住み替える
② 返済額軽減オプション:従来の支払額よりも少ない返済額で住み続ける

① の場合、仮に資産価値が想定残価を下回ったとしても、利用者の持ち出しは発生しません(国や機構がカバーします)。

② の場合も、残価に対して新しくローン査定が行われるわけではなく、一定の計算式によって残価設定月以降の返済額が決まる仕組みです。

しかし、注意が必要なのは、契約途中の住み替えケースです。満期での住み替えと違い、売却の際に市場評価が介在することになります。「市場評価額」が契約時に想定していた「残価」を下回る場合、その差が、現実の負担として表面化する可能性があります。