幸せな人のほうが不安や悩みが少ないと考えられがちだ。拓殖大学教授の佐藤一磨さんは「最新の研究では、不安や悩みについて考える量は、幸せな人も不幸な人もほとんど変わらなかった。幸福を分けていたのは、まったく別の要素だった」という――。

幸せな人はお風呂で何を考えているのか

トイレやお風呂といった一人で過ごすふとした時間、私たちの頭にはとりとめのない考えが浮かんでくることがあります。

こうした自然に浮かぶ思考に、幸福度の高い人と低い人で何か違いがあるのでしょうか。

泡風呂でリラックスする女性
写真=iStock.com/CentralITAlliance
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もし両者の思考パターンに違いがあり、その差を埋められるなら、「幸せになる思考習慣」に近づけるかもしれません。

最新の心理学の研究でこの点が分析され、幸福度の高い人と低い人をわける違いが明らかになってきました。

あえて何もしていない時間を作る実験

分析を行ったのは、アメリカのノースダコタ州立大学の大学院生のハミドレザ・フェレイドゥニ氏とマイケル・ロビンソン教授です(*1)

彼らは大学生334名を何もない部屋に閉じ込め、ただ「頭に浮かんだことを観察してもらう」という、極めてシンプルな実験を行いました。

実はこれまでも似たような思考内容を調べる実験が行われてきました。例えば、「過去の出来事をできるだけ多く思い出してください」と指示し、ポジティブ/ネガティブ記憶の量や内容を分析するという手法です(*2)

この方法でも思考内容を調べることはできるのですが、「過去の出来事をできるだけ多く思い出してください」という指示が意図的な思考を誘発してしまうため、必ずしも自然な思考とは違うのではないかと問題が指摘されていました。

そこで、フェレイドゥニ氏らは刺激のない静かな部屋で、一定時間「何もせず、浮かぶ思考」を観察してもらい、その後、思考内容を報告させるというシンプルな方法を取ったのです。

このような「何もせず、浮かぶ思考を観察する時間」は、脳科学でいうデフォルトモードネットワークが活性化する瞬間だと言えます。つまり、外界ではなく内側に意識が向かい、自分・他者・未来・過去・人生の意味などを自然に考え始める時間です。

フェレイドゥニ氏らは、この時間に参加者がどんな思考をしていたかを「自分のこと」「人間関係」「良いこと」「問題」「不確実性」「目標」などの項目で評価しました。