幸・不幸を分けるものは何か

では、逆に幸福度の低い人は何を考えているのでしょうか。

多くの人は、「不幸な人ほど悩みや不安ばかり考えている」と想像するかもしれません。しかし、この研究はそうした見方を支持しませんでした。

幸福度の低い人は、幸せな人よりも問題や将来への不安について特別多く考えているわけではありません。

違いは別のところにありました。

幸福度の低い人は、悩みや課題から、人間関係や目標、人生の良い側面へと自然に思考を広げることが少なかったのです。

たとえば、「仕事がうまくいかなかった」という出来事があったとき、幸福度の高い人は「次はどう改善しよう」「支えてくれる人がいる」「最近こんな良いこともあった」と思考が広がります。

一方、幸福度の低い人は、問題そのものの周辺を行き来し続けやすい。

つまり、幸福を分けているのは、ネガティブな思考を持つかどうかではありません。

悩みを抱えながらも、その先にある人とのつながりや目標、人生の前向きな側面へと心のスポットライトを動かせるかどうか――その違いが、幸福感を左右しているのかもしれません。

木製のブロック上の幸せと怒りの顔
写真=iStock.com/Pikusisi-Studio
※写真はイメージです

この研究が教えてくれる幸せへのヒント

今回の研究から、「何もすることがないときに、幸せな人は何を考えているのか」という点が明らかになりました。ここから以下の3つの実践的な示唆が得られるのではないかと思います。

①良いことを意識的に思い出す

一人になったふとした瞬間に、頭の中で何が思い浮かぶでしょうか。

「最近あった嫌なことや失敗」「自分と同じ歳なのに成功している他者」「将来への不安」「自分のキャリアへの失望」といった内容であれば要注意です。これらが出てくる場合、自分で自分に鞭打っているのに等しい状況だと言えます。

自分で自分を責める必要はありません。むしろ、日々頑張っている世界で一人しかいない自分を褒めてあげてください。「お前はよくやっている」と自分に声をかけてみましょう。

これに加えて「最近の良かったこと」を思い返す習慣づけをすると、気分が上向いていくのではないでしょうか。

②大切な人のことを考える

人間関係は幸福の中心です。忙しいときほど、意識的に「大切な誰か」を思い浮かべる時間を作るといいでしょう。

③目標を思い描く

未来に向けた思考は、人生の大きな推進力になります。大きな目標でなくても、「次の週末にやりたいこと」でも十分です。

以上の点を意識し、思考パターンを変えていくことで幸福度が向上する可能性があると言えるでしょう。

〈参考文献〉
(*1) Fereidouni, H., Robinson, M.D. What Do Happy People Think About? A New Paradigm for Assessing Self-Generated Thoughts in the Laboratory. Journal of Happiness Studies 27, 76 (2026).
(*2) Seidlitz, L., & Diener, E. (1993). Memory for positive versus negative life events: Theories for the differences between happy and unhappy persons. Journal of Personality and Social Psychology, 64(4),654-664.
(*3) Diener, E., & Seligman, M. E. P. (2002). Very happy people. Psychological Science, 13(1), 81-84.

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