「値引き競争」でEV販売が伸び悩み

さきほどBYDの持続可能性を考える際に、「売上が伸び続けているあいだは資金が回る」と述べたが、この前提もここに来て崩れてきている。

2025年7〜9月期、BYDの売上高は前年同期比3.05%減の1949億元、純利益は同32.6%減の78億元と、四半期ベースでは2020年1〜3月期以来となる減収減益に沈んだ。新エネルギー車の販売台数も同1.82%減の111万台と、少なくとも2021年第1四半期以降で初めて前年を下回った。

※日本経済新聞「BYDの7〜9月、22四半期ぶり減収減益 国内の競争激化」(2025年10月30日)
※CnEVPost「BYD Q3 net income drops 32.6% as car sales decline」(2025年10月30日)

九龍湾のBYD自動車ショールーム
写真=iStock.com/LewisTsePuiLung
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原因は明白だ。中国国内で繰り広げられる過当競争による際限のない値引き競争である。実際、BYDの車両平均単価はこの3年で2割も下落している。

シェアを維持するために価格を下げ、価格を下げたのでさらに薄利になる。薄利の中で利益を確保するために、台数を確保しようとさらに価格を下げる――。まさに絵に描いたような悪循環である。

中国EV企業はすでにこのような過当な消耗戦に入っていると考えられる。

BYDは本当に「勝ち組」なのか?

さらに、2025年1〜9月累計の営業活動によるキャッシュフローは前年同期比27.4%減と細り、運転資金が圧迫されている。研究開発投資や生産能力増強を続けた結果、同期間のキャッシュ流出は100億ドルを超えたと報じられている。

※Business Standard「BYD's $100 billion EV success turns into a $10 billion cash outflow problem」(2025年11月3日)

ここで思い出してほしいのは、BYDの資金繰りがサプライヤーへの支払い先送りによって成り立っている点だ。販売が鈍化し、キャッシュフローが細るということは、その先送りを支える生産や研究開発の原資そのものが揺らぐことを意味する。

EV市場の今後の動向次第では、「隠れ負債」という時限爆弾の導火線に、ついに火がつきかねない局面に入っているのである。

BYDは中国EV業界において、大きな黒字を稼ぎ出す貴重な「勝ち組」の代表格とされてきた。その勝者にしてなお、7兆円超の隠れ負債を抱え、本業の採算は値引き戦争で崩れ始めている。特に肝心の国内販売で不振が続いている。

BYDの強さは研究開発費の潤沢さにある。EVはまだ発達の途中にあり、研究開発競争で後れを取れば、すぐに他者に追い抜かれかねない。過当競争で目先の研究開発費が捻出しにくくなったことをなんとかするために、「迪鏈」という方法に頼りだしたのだろう。