綱渡りの資金繰りに苦しむことになる
誤りに気づいても引き返せない。損失が膨らんでいるとわかっていても止められない。この構造こそ、権威主義体制が抱える宿痾である。市場の淘汰機能が政治的な思惑によって歪められ、本来退場すべき企業が補助金で延命され、過剰生産が積み上がっていく。
中国当局はようやく過当競争の是正に乗り出し、自動車メーカーにサプライヤーへの60日以内の支払いを求め始めた。だが、支払期間を短くすれば、BYDの資金繰りが正常化するのではない。
BYDは、今度はサプライヤーに適正に支払いを続けながら、多額の研究開発費を捻出するという綱渡りの資金繰りを続けなければならない。いわば、新たな課題を与えられただけである。現状の課題は何も解決できていない。
そして、この後戻りできない中国国内の構造的な歪みは、決して対岸の火事ではない。国内で消化しきれない過剰生産の波が、他国へと押し寄せているからだ。
そもそも現在のBYDは、あまりに大きくなりすぎて、簡単に潰すわけにはいかなくなっている。改革を先送りにして、市場拡大とBYDの自転車操業のチキンレースを繰り広げるしかないのである。
日本政府は中国EVへの補助金を中止せよ
日本政府はEVなどの環境車に「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」を出しており、BYD製も対象になっている。
果たして、中国政府が補助金を出して世界シェアを取り、いまだに多額の政府補助金を受け続けているBYDなどの中国EVに日本政府が補助金を出すというのは、公正な制度と言えるのだろうか。
中国EVの脅威を語るとき、私たちはしばしば「安さ」だけに目を奪われる。BYDのEVは中国国内では約200万円で売られ、その価格競争力に日本メーカーが太刀打ちできないという論調も根強い。
だが、その安さは、売れなくなったEVを「投げ売り」せずに済むよう価格を下げて輸出することで、なんとかもたらされたものだ。そんな企業の経営戦略を賞賛する日本のマスコミは何を考えているか。これでは、国内生産を頑張っている日本企業をあまりに軽んじていないだろうか。
過剰投資が過当競争を生み、過当競争が資金繰りを困難にしている。研究開発競争でつまずけば、一気にシェアを落として先行者利益が一気に失われる。そんな中国企業に未来があるかどうかはわからないが、日本政府もそれを延命させる措置は中止すべきである。

