万が一、BYDが破綻してしまったら…

先述したBYDの「サプライチェーン・ファイナンス」を支えているのが、「迪鏈(ディーチェーン)」と呼ばれる独自の金融ツールである。これは電子的な債権証書の一種で、BYDはサプライヤーへの支払いに、現金の代わりにこの証書を発行する。

証書を受け取ったサプライヤーは、満期まで保有して現金化するか、満期前に割り引いて早期に資金化するか、あるいは別のサプライヤーへの支払いに転用できる。

一見すると便利な仕組みだが、現金をすぐに必要とするサプライヤーは、満期前に証書を割り引かざるをえない。その際の割引率は一説には年6%にも達するとされ、サプライヤーの利益を確実に削り取っていく。

問題の本質は、この「迪鏈」が銀行を介さず、BYDのプラットフォーム上で発行されて、グループ外で使えるとは限らない点だ。その価値と流動性は、最終的にBYDの信用力と販売能力だけに支えられており、デフォルトが発生した場合に保護してもらえるかどうかは不透明だ。

しわ寄せはすべてサプライヤーに

売上が伸び続けているあいだは資金が回るが、中国企業の場合、日本企業より「内部留保」というクッションが薄いことが多く、ひとたび販売の伸びが止まれば、サプライヤーへの支払いが滞り、資金繰りが止まる。そのしわ寄せはサプライヤーが背負い込むことになる。

納品から入金まで9カ月から12カ月も待たされ、その間の資金繰りのために高い金利を払って証書を割り引く。完成車メーカーが価格競争を激化させれば、その圧力はそのまま部品価格の引き下げ要求として下請けに転嫁される。

利幅を削られたサプライヤーが、コスト削減のために品質に手を抜けば、最終的に素材や部品などの品質に反映されることになる。日本企業もかつてデフレ不況の中でコスト削減の中でいくつもの問題が発覚したが、中国企業の場合、その監視体制についても信頼性は低い。