「エンジン車では勝てない」とEVへ

中国のEVメーカーは、2018年に487社が乱立したが、2024年時点で販売実績のある企業は129社にまで減少した。コンサルティング会社アリックス・パートナーズは、2030年までに生き残れるのはわずか15社程度だと予測する。

※The Wall Street Journal「China Has 487 Electric-Car Makers, and Local Governments Are Clamoring for More」(2018年7月19日)

この大量の乱立と淘汰は、市場の自然な競争の結果ではない。15年以上前、中国政府は「エンジン車では日米欧に勝てない」と判断し、新エネルギー車へ国家を挙げて巨額の資金を投じたことがきっかけだった。地方政府は企業誘致を競い、工場用地の無償提供、低利融資、直接出資を惜しみなく与えた。

中国政府は新興産業において、莫大な補助金を餌にして各企業から参入を促して、わざと過当競争を作り出し、イノベーションを起こすという独自の産業振興法をとってきた。これまでも、家電、鉄鋼、太陽光パネルなどいくつもの成功例を生み出している。

EVにおいても、大型補助金につられて参入を加速させ、IT、家電、不動産、バッテリーといった畑違いの業種までもがこぞってEV産業に殺到した。

習近平政権はもう後戻りできない

問題は中国EVの供給過剰が修正できなかった場合だ。市場拡大を上回って生産能力が過剰になれば、今後は「勝者なき価格戦争」を繰り広げるしかない。

配送センターに並ぶXiaomi SU7 電気自動車
写真=iStock.com/Robert Way
※写真はイメージです

過当競争になれば、通常であれば政府は企業を絞るために撤退を促すものである。だが、そのような「後戻り策」ができないのが今の中国だ。

なぜ後戻りができないか。ごく乱暴にいえば、中国にとってEVは、今や経済合理性ではなく、政治的な力学によって動かされている産業になっているからである。

地方政府にとって、誘致したEV工場は雇用を生み出し、中央政府が課す成長目標を支える貴重な基盤の1つとなっている。「採算が合わない」という理由だけでは、工場を整理するわけにはいかないのである。

また、EV企業の側も、補助金と過剰投資という「ドーピング剤」に慣れきっており、自力で競争力を上げる努力ができない。赤字になることがわかっていても価格を下げ、シェアを守り続ける以外の行動がとれないのである。