「100万円貸してと頼みに来た」

安部正明の夫人、倭文子しずこが当時を振り返る。

「千代子を世話する1年前ぐらい、細木が傷だらけの指輪をうちに持ってきて、どうしてもお金をつくらなければならない。これで100万円貸してと頼みに来た。うちの人はお金の貸し借りはしない。だけど細木と堀尾がよほど困っているようなので、知り合いの会社社長から100万円借りてやった。細木には『これは俺が貸すんじゃない。絶対返せよ』と念を押してました」

こういう苦境にいた細木にとって、島倉千代子はまたとない金づるに見えたろう。

細木は島倉をコマ劇場に送り迎えする中で彼女に取り入り、島倉の身柄を安部家から細木と堀尾が住むマンションに移し替えて、確実に管理しようとした。彼女は島倉という金づるを安部家から引き離して手元に置き、逐一コントロールしなければと考えたのだ。

そのため安部に対して、自ら「安部家を出たいので」と島倉に言わせた。

細木のたくらみはすぐ安部が察知したが、安部のほうはもとより島倉千代子で食おうなどとは考えていない。細木のやり方が頭に来たものの、結局、黙認することになった。

島倉千代子の金をかすめとった(大相撲モンゴル巡業のエンフバヤル大統領主催歓迎晩さん会に出席した際の細木数子氏、2008年8月26日)
写真=時事通信フォト
島倉千代子の金をかすめとった(大相撲モンゴル巡業のエンフバヤル大統領主催歓迎晩さん会に出席した際の細木数子氏、2008年8月26日)

細木が島倉をかすめとった

細木はやましさを感じたのか、以後、安部家には足を踏み入れていない。ただ堀尾昌志が一度安部家に謝りに行ったという。

「この度は細木が先生に嫌な思いをさせ、まことに申し訳なく思ってます。だけどぼくは細木と人間性が違います。ぼくは安部家の雰囲気が好きで出入りさせてもらっただけで、欲も得もない。ぼくの気持ちだけは分かってください」

目を涙でうるうるさせて頭を下げたと安部倭文子は言う。

まさしくこうした細木と島倉の出会いがその後の細木蓄財のかなめ石になった。細木がどう島倉と出会い、知り合ったのか、それが重要だが、細木のほうでは、コマ劇場の騒ぎの後、島倉が夜、泣きながら歩いていたのを、車に乗っていた細木が見咎めて車を降り、島倉に声を掛けたのが最初のきっかけだ、などというつくり話をしている。

彼女の言い分はコロコロと変わったが、なんてことはない、安部正明が両者をつなげた神であり、細木はその神から島倉を掠め取ったというのが真実である。

では、細木はおおよそいくら島倉から収奪したのか。