「経営安定」のため新事業に次々参画

幸いなことに、僕が採用したメンバーたちはみな人間性が良く、社内の人間関係は非常に良好でした。社内の雰囲気も悪くなく、コミュニケーションもしっかり取れていた。だからこそ、「このメンバーたちのためにも、絶対に会社を成長させなければならない」というプレッシャーにも似た思いは、日に日に強くなっていきました。

そうした強い思いから、当時の僕たちは少しずつ事業の幅を広げていきました。そこには、新しいことに挑戦するのが好きで、実際に事業として形にするバイタリティに溢れていた父の影響も大きくありました。

僕たちはユニフォーム販売を軸にしながら、売上になりそうな別の事業にも次々と手を出していきました。いずれも、「売上を伸ばすため」「会社を大きくして社員を幸せにするため」に良かれと思って始めたものです。

当時は、事業の柱が増えること自体を「経営の安定」だと前向きに捉え、自分たちは順調に成長していると錯覚していました。

売上も2億円、借入総額も2億円

実際、表面上の売上は順調に伸びていきました。僕が入社した頃に6千万円ほどだった年商は、10年ほどで2億円を超えるところまで大きくなりました。しかし、手元の通帳を見ると、利益はほとんど増えていなかったのです。

事業が増えたことでやるべき業務は確実に増え、扱う商材も、管理すべきお客様も、発注の手間も何倍にも膨れ上がっていました。現場は常にバタバタと忙しく、会社としてはものすごいエネルギーで動いている。それなのに、会社は一向に豊かにならず、資金繰りの苦しさは増すばかりでした。

BtoBの商売は、掛け売りが基本です。売上が立っても、すぐにお金が入ってくるわけではありません。一方で、仕入れ代金や増えた社員の人件費、多岐にわたる事業の在庫といった支払いは、売上の入金よりも先に容赦なく発生します。

利益が十分に出ていない状態で売上の規模だけが大きくなるとどうなるか。手元の現金がどんどん足りなくなり、会社を回すための運転資金が爆発的に膨れ上がっていくのです。その結果、資金ショートを防ぐために銀行からの借入は少しずつ、しかし確実に増えていきました。

運転資金の借入に加え、当時は父の判断で決定した自社ビルの購入も重なり、気がつけば借入総額は売上と同じ2億円規模にまで達していました。