虎屋はもともとは京都の御所御用菓子屋

なお、県別に記載した老舗企業は、地元で創業、継業しているケースが大半であるが、ようかんの虎屋のようにもともとは京都で御所御用菓子屋の地位を確立していたのが、御所の東京遷都にともない東京に本拠を移したというような例もある。

また、1566年に滋賀で創業し、蚊帳などの繊維製品を全国に行商していた近江商人の西川甚五郎商店が、江戸に進出して現在の西川産業(東京西川)、京都に出店して現在の京都西川、大阪に出店して現在の西川リビングという企業として活動するようになり、全体として「ふとんの西川」グループを形成しているといったケースもある。

その後、2019年には、グループのうちの西川産業(東京西川)、西川リビング(大阪西川)、京都西川の3社が統合して西川株式会社となった。分布図では祖業の地でなお継業している西川テックスのみを掲げた。

図中の老舗企業を古い順から並べると以下である。

大阪・金剛組(建築工事)578年創業
奈良・菊岡(医薬品小売)1184年創業
長野・佐久ホテル(旅館・ホテル)1428年創業
島根・たなべたたらの里(たたら製鉄)1460年創業
和歌山・駿河屋(練羊羹)1461年創業

図に赤字で記した老舗企業は、江戸時代初期にあたる17世紀以前に創業した企業(うち太字は16世紀以前創業)である。日本列島の多くの身近な地域で非常に古い老舗企業が息づいている。

16世紀以前、すなわち関ケ原の戦い以前に創業の企業は日本列島の中央部に多い。それだけこの地域が歴史的に先行しているとも言えよう。

関西地方の地図
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老舗が生き残り、ヒット商品を生む例も

この3年ぐらいの状況については、山形の大沼百貨店が廃業したので、別の老舗企業に差し替えざるをえなかったのを除くと、図中の企業については、事業譲渡や赤字克服などの試練を乗り越えながらも老舗ブランドが失われた例はない。

むしろ、多くの老舗企業は、新商品開発、販路拡大などで時代に適応し、ヒットを飛ばしているケースもまれではない。

前述した大阪・金剛組は、中堅ゼネコンの高松コンストラクショングループの傘下に入った後、黒字化を達成。現在は財務基盤も安定し、宮大工の専属集団である「匠会」が中心となって寺社建築に特化した事業を継続しているという。

図中2番目に古いのは奈良市・ならまちの菊岡漢方薬局であるが、24代目当主の菊岡泰政氏が、伝統的な漢方相談のほか、残った漢方薬を活用して開発した自家製スパイスカレー粉の体験や販売でも注目を集めているという。

図中3番目に古いのは長野県佐久市にある日本有数の老舗旅館「佐久ホテル」であるが、現在も伝統を守りつつ、天然温泉や名物の佐久鯉料理、信州牛などを提供する人気の宿として高い評価を得ている。