「渡航自粛」で日本の活路が見えた

中国客の減少は、たしかに一時的には痛手ではあった。ただし、今回の危機を通じ、日本政府が自力では果たせなかった戦略上のシフトチェンジが一気に実現しようとしている。

政府は長期目標として、2030年までに訪日客6000万人、旅行消費額15兆円を掲げてきた。ブルームバーグが取りあげたように、訪日客一人当たりの消費額9%増や地方宿泊数の1億3000万人泊超への2倍以上の拡大も目標に据える。また、観光公害の是正にも取り組むとしている。

【図表1】観光立国の実現に関する目標
政府は2030年までに訪日客6000万人、旅行消費額15兆円を目標に掲げる。(出所=観光庁ホームページ「観光立国推進基本計画」)

今回の訪問者層の変化を受け、訪問元が多様化した。さらに、訪問者数としても過去最高を記録した昨年の実績をみるに、特定の国への依存軽減を達成したと言える。また、欧米諸国からの長期滞在・高額消費層が落ち着いて過ごせる環境が整ったことで、消費額向上への布石も整った。

訪問者の多様化、消費単価の上昇、地方への分散、そしてデパートなど小売各社の客層転換。ここまで見てきたこれらの変化は、政府の長期目標とも重なる。

中国は日本への制裁を意図して渡航自粛要請を設けたが、図らずも日本の観光業に良い方向に作用する格好となった。

(初公開日:2026年5月17日)

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